126.ツキを引き寄せる洗脳術 苫米地英人

成功する人は、成功するきっかけが見えています。 ツキがあったから、成功したのではなく、皆さんがツキだと思い込んでいるものが「見えている」から成功したのです

 

この世に、ツキは存在しません。 ツキを信じている人は、何も知らない人です。 皆さんがツキだと思っているものは、ただ成功のきっかけが「見えていたか」「見えていなかった」だけのことです。 「あとほんの少しのツキ」ではなく、あなたが成功するために必要だった条件が見えていたかどうかなのです


数年前、村上ファンドを率いて、世間を賑わせた村上世彰氏を覚えているでしょうか。彼はファンド仲間の友人たちと口裏を合わせて同じ株を別々に購入したことが、インサイダー取引に当たるとして、逮捕されました。 しかし、もし彼らが1つのファンドに投資し、そのファンドが株を一括して購入していれば捕まることはなかったでしょう。それぞれが口裏を合わせて同じ株を1億円ずつ購入するのは違法ですが、同じ株を2億円で一括して購入するのは、結果としては同じことにもかかわらず、合法なのです。これはファンド・オブ・ファンズと呼ばれる手法で、もともとはアメリカのファンドが始めました。今では日本のみならず、世界中のファンドが真似をして荒稼ぎしています。

 

「ツキがない」と思っている人は、成功するために必要な情報を知らないだけです。社会におけるありとあらゆる現象(つまりは人間の脳)に働きかければ、皆さんがツキだと思っているものはすぐにでも手に入ります


明日の株価が分かっていれば、値上がりする株だけ購入すればよく、明日の為替が分かっていれば、値上がりする通貨だけ購入すればよいのです。合理的な選択には、ツキなど存在していません。 ツイていない人は、株価や為替が分かっていないから、損をするのです。 「知る」そして「選択をする」。 ツキたければ、これだけで十分です。


回りくどいいい方ですが、「ツイている」「ツイていない」ではなく、知っているがゆえに「ツイているのが当たり前」と思わなくてはいけません


物事のからくりを知っていれば、それをツキと思わず、自ら積極的に働きかけ、知らない人から見れば「ツイている」結果を手に入れられるでしょう。 高い抽象度で物事を見ることができれば、自然と視野は広がり、色々なことが分かってきます。それこそ、他人による仕掛けにも気がつきます。


なぜなら、この世には不確定性原理が働くので、完全情報などは存在しないからです。私たち人間にとって、宇宙は部分情報から成り立っています。 かつては、完全情報の存在を信じていた人は大勢いました。つまり、神の存在を信じていた人々です。しかし、皆さんもご存じの通り、残念ながら全知全能の神は不完全性定理により存在し得ません。 完全情報がないということは、全てを知り得るのは不可能ということです


これはつまり、100%ツイている人はいないことを意味しています。と同時に、完全情報がないからこそ、ツイている人とツイていない人の差が出てくることも意味しています。


もし完全情報があり、皆が完全情報を手に入れてしまえば、ツキの差はなくなってしまいます。 全ての人が明日の株価がどうなるかを知っていれば、値下がりする株を購入する人はいなくなるでしょう。競馬でも必ず勝つ馬を皆が知っていれば、負ける人は出ません。誰もが全情報を持っているわけですから、失敗する選択をするはずがありません。 この世にツイていない人がいるのは、この世に完全情報がないからです。 ツイている人がいるのも同じことです。


ツキにこだわる人は「全ての情報を知る必要がある」と誤解しがちですが、そんなことはありません。ただ他人よりも多くの情報を持っていればよいのです。そしてそれは、高い抽象度で物事を見ることができれば、誰でも可能です。 他人よりも多くの情報を入手し、合理的判断を下せば、それが「ツキ」になるのです。


高い抽象度で物事を見ることは、情報を選別できるだけでなく、他人からの働きかけに対応したり、逆に他人に働きかけて自分の思い通りに行動させたりということを可能にします。 人間は、欲望にまつわる仕掛けにはとても弱いという一面があります。 というのも、人間は欲望に囚われると、脳が先走ってドーパミンという物質を分泌します。ドーパミンは行動を促す物質で、分泌されるとその欲望を満たさなければ気が済まなくなってしまうのです。これを「プライミング」といいます。


もし、あなたがA社の株を購入するか、B社の株を購入するか迷った挙げ句、A社の株を購入すると決めたとしても、それがあなたの自発的な判断だとは限りません。いくら最終決定があなた自身の判断だったとしても、色々なところから仕入れた情報をもとにしていれば、その情報源(テレビ、新聞、知人など)に仕掛けられている可能性がありま


テレビや新聞、あるいは知人によってコントロールされていれば、それは自由意志とはいえません。


もっといえば、仕掛けている相手よりも高い抽象度を持つのです。抽象度が低いと、他人からの仕掛けに気づきません。抽象度が高ければ、仕掛けを避けられますし、その気になれば仕掛けを引っ繰り返すこともできるでしょう。逆に相手に仕掛けることも可能です。 あなたが自由意志で選択できるかどうかは、抽象度の高さにかかっています

 

ちなみに、最も高い抽象度を、「空(くう)」と呼びます。空は完全な自由です。この境地に達しているのは、釈迦しかいません。私たちには不可能です


ジンクスを信じるのは、オカルトを信じるのと同じで、その人の心の弱さを表しています。人やものにすがっていると、フェアな判断ができません。それでは、永遠にツキは来ないでしょう


 本当の「ツキ」は、自分の力で手に入れるものです。 「ツイている」「ツイていない」に確率は関係ありません。「ツキ」を手に入れるには最初から相手ありきです。 仕掛けてくる相手より1つでも高い抽象度に立てるかどうか。その上で自由意志によって決定できるかどうか。それだけです。


そう考えると、あえて「ツキ」を定義するならば、人間が未来にこうなりたいという願望に対して、情報空間、つまり人の脳の中に働きかけた結果、自分では関知できない空間にまで波及して、間接的な要因として自分に有益な事象をもたらすことといえます。 未来の事象だけれど、情報空間への働きかけで現在の確率変数を変えて得られるも

のが「ツキ」になるのです。


カジノで一獲千金を狙うのであれば、相手はディーラー、つまり人間です。ビジネスで稼ぐときも、人間を相手にします。自宅で株のトレードを行うにしても、ツールとして利用するのはパソコンですが、実際に株を売買しているのは人間です。 ツキと思われる世界では、その対象として人間が介在しています。ということは、あなたの相手となる人間に影響を与えれば、確率変数は変わります。 これは私が先に紹介した2つの確率理論とは異なります。ベイズ確率


つまり、ある働きかけは、情報空間からのほうが物理空間からよりも効果は大きいということです


情報空間からの仕掛けが、物理空間で得られるエネルギーの大きさに関係するという観点からも、「ツキ」の仕掛けには抽象度の高さが必要なのです。


要するに、あなたの過去の記憶が、無意識のうちにあなたに紅茶を選ばせているのです。 この無意識の行動をうながすメカニズムを、「ブリーフシステム」と呼びます。

 

周囲の人から「あなたはツイていない」といわれたり、実際にギャンブルに負けた、といった抽象的な概念や具体的な体験がもとになって、あなた自身を「ツイてい
ない」という評価にしてしまっているのです。 ということは、あなたが採るべき手段は1つ。 「ツイていない」というあなたのブリーフシステムを作り替えればよいのです。

 

現状を維持しようとしていることを変えないと、ブリーフシステムは作り替えられませんし、抽象度も上がりません。 ただし、生活習慣を変えても一度で終わりではありません。新たに変えた習慣に慣れてきたら、また変えるのです


慣れてしまえばそれが新たなホメオスタシスレベルとなってしまうので、再び壊す必要があります。ホメオスタシスレベルを壊し続ければ、あなたをこれまで縛ってきたブリーフシステムがなくなり、あなたは自由になるはずです。


そうして初めて、本当に「ツキ」を受け入れられる状態になるでしょう。


ブリーフシステムを作り替えることは、今現在のホメオスタシスレベルの外側へ飛び出すことです。 人は常に自分が心地よいと思う空間に依存してしまいがちですが、その空間があなたにプラスに働いているとは限りません。まずはリセットしてホメオスタシスレベルの外側へ飛び出してください。


なぜなら、ホメオスタシスレベルでは自分が最も心地よい状態にあることなので、自身の能力を発揮しやすいからです。人が高いパフォーマンスを示すのは、ホメオスタシスレベルにいるときです。 逆にいえば、高いホメオスタシスレベルにいる人は、当たり前のように高いパフォーマンスを発揮できます。


しかし、現状を打破したいと思っている人にとっては話が変わってきます。 いくら現在のホメオスタシスレベルが自分にとって心地よい状態にあるとはいえ、現状が自分の理想と違っていれば、そこに甘んじるのは馬鹿げています。社長になりたいのに、部長の生活に満足していても意味はないでしょう


本書の冒頭で紹介した、年商が150億円と100億円の2人の社長は、私と知り合った当初は年商が60億円と40億円でした。彼らはまだ30代半ばという若さだったので、これでも大変な業績です。しかし、私は特に驚きはしませんでした。なぜなら、
彼らの最も心地よい状態、つまりホメオスタシスレベルが年商60億円と40億円だったからです。 逆に私は「君たち、ホメオスタシスレベルを変えないと永遠に60億円と40億円のままですよ」と告げて、彼らのホメオスタシスレベルを変える方法を教えました。すると、私の忠告を受け入れたことで、2人揃って年商を100億円以上にまで伸ばすことに成功しました。 彼らは年商60億円と40億円のホメオスタシスレベルから脱したことで、100億円以上の稼ぎ方が見えたのです。 もし、あなたが本当に「ツキ」のある人生を送りたければ、現状に嫌気が差さなければなりません。現状の慣れ親しみ、つまりホメオスタシスレベルを壊す必要がある


フリーゴールとは、自分がどうなりたいのか、どういう世界を作りたいのかを自由意志で以て、明確にイメージすることです。 「全ての男性の視線を釘付けにするような美女になる」 「世界一の美女と結婚する」 「年収を1億円にする」 「年商100億円企業のオーナー社長になる」


どのようなものでも構いません。 人間はフリーゴールを設定して、その世界を強烈にイメージすることができれば、ホメオスタシスレベルを現状のものからフリーゴールの世界へと移行させられます。 そして、ホメオスタシスレベルがフリーゴールの世界へ移行することで、初めて「ツキ」が生まれます。あなたのフリーゴールが周囲の人に働きかけ、フリーゴールを達成するために必要な「ツキ」を引き寄せるのです。 いい換えると、フリーゴールがなければ、あなたにとって必要な「ツキ」は見えてきません。なぜなら、あなたにとって何がツイているのか、あなた自身が理解できないからです。

 

フリーゴールがあれば、今まで見えていなかった「ツキ」が見えてきます。そして、その「ツキ」を引き寄せるために必要な手段も見えてきます。 あなたのフリーゴールのために他人を動かす方法も見えてきます。 あなたのフリーゴールを中心に、環境が変わってくるのです。 ここで気をつけてほしいのは、フリーゴールはあなたの現在のホメオスタシスレベルの外側に設定するということ。 現状の生活では到底達成できないと思えるような目標にしなければ、現状を打破できません。


フリーゴールは現在のあなたにとって、とんでもなく高い水準のものであればあるほど望ましいのです。「今の私の実力ではとてもじゃないが達成できない」と思えるくらいのものであることが重要です。 「夢は現実的であるほど実現しやすい」というようなことを口にする人がいますが、これは明らかに間違っています。 現在のホメオスタシスレベルに収まるような「現実的」と思える程度


また、フリーゴールはただ想像すればよいというわけではありません。 そのフリーゴールの世界を今まさに体験しているようにイメージしなければなりません。 「年商100億円企業のオーナー社長になる」というフリーゴールであれば、すでに社長であるかのように振る舞います。 つまり、フリーゴールの世界に「臨場感を持つ」ことが必要とされます。これが、あなたが「ツキのある世界」に入り込むための前提となるのです。

 

簡単にいうと、1つの仮想空間に対して、自我があり、自我とホメオスタシスのフィードバックが強いと臨場感が高くなります。すると、その仮想空間がリアルになるのです。 物理的現実世界があるから、あるいはそれに近い仮想空間があるから、臨場感があるのではありません。人間のホメオスタシスのフィードバックが強い世界に臨場感があって、そこが本人にとってのリアルとなるのです。 あなたがフリーゴールの世界に臨場感を持てば、あなたのホメオスタシスレベルは現状から外れ、フリーゴールの世界とアジャストし、フリーゴールの世界がリアルとなります。

 

そうではなく、未来に起こることが、現在に影響を与えるのです。未来の事象、つまりあなたが設定したフリーゴールにより、現在のあなたの行動は決められるのです。

 

「未来にこうなりたい」というフリーゴールからの働きかけによって、情報空間、つまりあなたの脳が変化し、あなたにとって有益な情報(=「ツキ」)がもたらされ
るのです。 そもそも過去は永遠にやって来ません。どれだけ待っても来ないものから時間が流れて来るというのはおかしいでしょう。もっといえば、過去は時間が経てば経つほど、現在から離れていきます。 一方、未来は待っていれば必ずやってきます。1秒先の未来は1秒後に、1年先の未来は1年後にあなたのもとに訪れます。 そう考えれば、時間の流れは過去から未来ではなく、未来から過去に流れているほうが道理として違和感はないでしょう。


引っ張られるはずです。これまでの話を理解できていれば、未来であってもそれが現在すでに訪れているものとしてあなたは行動しているはずです。 そして、あなたのフリーゴール次第では、あなただけでなく、あなたの周囲の人々もあなたの未来に引っ張られるのです。


あなたがフリーゴールを設定すれば、それはただ未来を待つのではなく、未来を選び取ることになります。こちらから先に未来を選ぶわけです。 過去の結果が未来であれば、人は生きている理由はありません。未来を選択できない人生を歩んでも楽しくないでしょう。 「過去から未来」の概念で未来を選択している人は、選択したつもりになっているだけです。脳が1つ前の状態から次の状態を決めているだけで、実際には何も選択していません。 そうではなく、未来をリアルに描くことで、未来を選択するのです。そこで初めて、あなたは自分にとって理想の人生を歩むことができるのです。


フリーゴールを設定し、新しいホメオスタシスレベルを築く際に、その世界の臨場感を高めるための「アファメーション」というテクニックがあります。 アファメーションとは直訳すると「確認」。意味合い的に「暗示」などで用いられがちですが、本書では解釈が異なります。 暗示とは、そうではないと分かっていることを「そうだ」と思い込ませる技術のことです


そのとき、そのフリーゴールにさらに臨場感を持たせるために、現在進行形で情動の言葉を入れてあげるのです。 「今、私は社長でとても楽しい」とか「私の収入は1億円で大変誇らしい」といった具合です。 感情を込めた言葉を発すれば、臨場感は高まります。 もちろん、感情は全てポジティブなものであり、五感で体験できる内容です。「しまった!」とかネガティブな言葉を発してはいけません。 アファメーションは毎日行います。朝起きていう。夜寝る前にいう。 フリーゴールそのものではなく、フリーゴールを達成している自分の姿こそが、今現在の自分であるかのように述べるのです。そうすれば、フリーゴールの世界への臨場感がより高まり、フリーゴールがリアルに近づくはずです。


情動を伴った言葉を発し続ければ、自我がより鮮明になります。自分が本当にフリーゴールを達成した人間へと変化していくのです。 大切なのは、何度も繰り返し呟くことです。 声に出さず、心の中で呟いても構いません。呟き続けることで、その言葉による体験を脳の中で再体験し続け、実際にフリーゴールを達成している姿に近づくことができます


「あなたは肝心な場面でいつも失敗する」と他人からいわれ続けていると、失敗するという世界に臨場感が高まり、肝心な場面で本当に失敗してしまうのです


ネガティブな言葉を吐くことは、自分の評価を下げるだけです。ブリーフシステムが作り替えられ、ホメオスタシスレベルが下がってしまいます。


「自分は優れている」と思うのは、自己の評価を高めることにも繋がります。 人間は意外と自分を卑下しがちです。特に、日本人はその傾向が強く、他人から褒められても「いやいや、私なんて……」と謙遜した言葉を口にしたり、実際「自分はまだまだだ」と思ったりします。「謙虚は美徳」などとよくいわれますが、その考えはあまり褒められたものではありません。


「まだまだだ」と思うと、本当に「まだまだ」な自分になってしまいます。これはブリーフシステムについての下りからも、分かっていただけるでしょう。 自分に対する評価は常に「優れている」と考えてください。決して「自分はダメだ」などとネガティブに考えてはいけません。 仮に、失敗しても「自分らしくない」と思うことです。 「彼氏にフラれるなんて、私らしくない」 「仕事でミスするなんて、私らしくない」 どんなに解決の難易度が高くても、できて当然だと信じてください。仮にできなかったとしても、それを自分の能力のせいにしてはいけません


あなたは好きなものがありますか? あなたが今一番やりたいことは何ですか? フリーゴールの設定では、自分の好きなことを行うようにしてください。なぜなら、人は「自分がしたいことしかしてはいけない」からです。


一流のプロスポーツ選手は、毎日のトレーニングを欠かしません。一見、地味で面倒に思えますが、彼らは決して嫌々させられているわけではありません。 好きなスポーツで最高のプレイを見せようという強烈なエフィカシーの働きかけにより、自ら進んでトレーニングに励んでいます。「have to」ではなく、「want to」だからこそ、継続できるのです


「好きこそものの上手なれ」とはよくいったもので、好きであればいつまでも続けられます。「毎日、朝から晩まで働かなくてはいけない」では上達が遅いですが、「一日中働くことができる」であればどんどん上達します。


フリーゴールを設定することは、あなたのブリーフシステムを作り替えるだけでなく、あなたに好きなことだけをしてもらうためにも必要なことなのです。


実際には年収が300万円であっても、自分が年収1億円の人間だとイメージすると、1億円の稼ぎ方しか見えなくなります。300万円の稼ぎ方など見えなくなり、興味も湧きません。年収1億円を達成するために必要な行動しか起こさないのです


また、フリーゴールが近づけば、「もう達成できたも同然だ」と高をくくってしまい、テンションも下がってしまうでしょう。それはもうフリーゴールではなく、現状であり、それ以上の成長が期待できません。同様に、フリーゴールに必要な「ツキ」も現状に沿ったものしか引き寄せられません。 ですから、フリーゴールが近づいた時点で、新たなフリーゴールを設定するのです。 「年収1億円」が最初のフリーゴールだとすると、それが達成されると「年収1億円」が現状になってしまいます。そうではなく、年収が1億円になる少し前、7000万円くらいで次のフリーゴールを設定するのです


新たなフリーゴールは当然、今のフリーゴールよりも高くします。例えば「年収1億円」から「年収10億円」にします。あるいは「内閣総理大臣になる」とか「世界平和を目指す」といった、異なる視点から設定しても構いません。 一流のスポーツ選手が引退後に、実業家としても大成している例などは、新たなフリーゴールの設定に成功したからでしょう


フリーゴールが遠ければ遠いほど、強いエネルギーが生み出され、あなたの中で再び高いクリエイティビティが生まれるはずです。 あなたの能力の限界は、自分のイメージの限界です。自己イメージが、あなたの能力を定義しています。ということは、イメージが大きければ大きいほど、あなたの能力は広がっていくのです。


常に自分の現状を凌駕するフリーゴールを設定し、自分の能力をどこまでも上げ続けてください。 そうすれば、「ツキ」は必ずあなたのもとに訪れ続けます


上場株式市場? 違います。あれはただ自由に見せかけているだけで、実際は機関投資家の恣意で動いています。モルガン・スタンレーゴールドマン・サックスがぼろ儲けしていたのがその証拠です


それに上場株式市場は、世界のマネーサプライの枠組みでいえば、ごくわずかなものでしかありません。世界のマネーサプライのほとんどは、非上場市場で取り引きされています


サブプライムローンの債券は、いわゆるジャンクです。ジャンクゆえに利回りが高い。そのため、元本が下がったとしても、それを上回る利回りが上がっていれば、儲かるというわけです。見かけ上は、元本保証を可能にしていることになるのです。 * では、なぜサブプライムローンは崩壊したのでしょうか。


最大の誤算は、サブプライムローンがテレビで報道され、問題視されたことでしょう。 メキシコから移住してきた貧しい人たちに、到底返せもしないお金を貸し付け、翌年には金利を上げて彼らを破産に追い込んだことが、詐欺行為だと非難されたのです。 お金を貸した側は、金利さえ取れていれば何の問題もありませんでした。もともと元本資本は、準備預金制度で生みだしただけですからタダ同然です。ところが、報道で「貸し付けられた人々がかわいそうだ」とか「これは犯罪だ」などと騒がれ、アメリカ国民の心情が「サブプライムローンは最低だ」となってしまったのです。 人々が合理的判断ではなく、情動で動かされてしまったのです。


サブプライムローンの数式は、プロであれば誰でも読めます。MITの修士卒業生が作ったレベルに過ぎないので、少しばかり数学に強い人であれば簡単に理解できるでしょう。 しかし、一般の消費者には分かりません。そして、彼らは報道を見て、「サブプライムローンの数式は嘘っぱちだ」と思ったわけです。さらに「1万人のメキシコからの移民の2割を捨てて、残りの8割をAAAに格付けするなんてありえない」と。 一旦信用を失えば、あとは落ちる一方です。サブプライムローンは危険だと思った消費者たちが、サブプライムローン債券が組み込まれた金融派生商品を一斉に売りに走りました。これが飛び火して、レバレッジをきかせて借入金を担保に当て、50倍以上ものお金を借りていたヘッジファンドは次々に潰れました。サブプライムローンは金融恐慌の起爆剤となったのです。


おそらく皆が安心して購入し続けていれば、利回りがついてくるため、サブプライムローンは本当に元本保証だったはずです。50倍ものヘッジをかけても大丈夫だったのは、利回りでリスクを取り除けていたからです。 それがアメリカ国民の情動によって、いとも簡単に崩れてしまいました。 これがまさに経済学が机上の空論としてしか働かなかったことの証明です。人間の「非合理」な行動が数式に組み入れられていなかったのです。というよりは、非合理心理行動は数式化できません


私の知り合いに大手投資銀行に勤めていた人がいますが、彼はその大手投資銀行を辞めたあと、地方銀行からCDSクレジット・デフォルト・スワップ)を1本100万で買い取ってぼろ儲けしています。CDSというのは、倒産リスクを利回りに変える金融派生商品の1つで、サブプライムローン全盛の折に大いに市場を賑わせました。しかし、サブプライムローン問題による金融危機以降、問題になって、手放そうとする機関投資家が一気に増えました。 各銀行も一時は大量のCDS保有していましたが、サブプライムローン問題後は、持っているだけで株主総会において吊るし上げにされるので、必死で手放そうとしました。しかし、大手証券会社に売却の打診をしても、お金を支払ってもらえるどころか、逆にそちらがお金を支払うのであれば引き取るといわれる始末でした。そんな地方銀行に手を差し伸べるような形で、私の知り合いが登場したのです。 CDSの元本は1本300億円。その300億円に対する利回りがついてきます。それが100万で買い取れるのですから格安です。それでも地方銀行側は、証券会


ではお金を支払わないといけないものを100万円で引き取ってもらえるため、大喜びで売りに出しました。 確かに、CDSは持っていると不良債券化する恐れがあります。しかし、いくら危険といっても、会社が倒産しない限り、毎年プレミアムで5%以上の利回りがつきます。300億円の5%ということはつまり、彼は毎年15億円を手にすることができるのです。 彼はいくつかの地方銀行からCDSを何本も買い取っているわけですから、その収入は莫大です。そもそも彼は、大手投資銀行に勤めていた時代、地方銀行CDSを売りさばいていた張本人です。CDSを1本売るごとに、会社から5%のボーナスを貰っていました。それを今度は安く買い叩き、さらに一儲けしているのです。


CDSを組み入れた金融派生商品は、証券会社で購入できますが、金融派生商品なので、東証で上場されているわけではありません。証券会社が代理人として販売しているだけで、上場商品ではないのです。元本で8000兆円もの市場があり、株式市場よりも大きいのに、上場していないのです。 そして、こういった話は非上場市場だから起こる話であり、上場市場での話ではないために我々の耳には入ってきません。 本書をここまで読んだ皆さんであれば、もうお分かりでしょうが、CDSを買い集めた私の知り合いは決してツイていたわけではありません。知っていたからこそ、ぼろ儲けできているのです。しかも、彼はアメリカ政府がCDS公的資金を注入しているので、引き受け会社がそう簡単に倒産しないことも織り込み済みです。


他人から見ればツイているようにも見えますが、そうではありません。ただ他人よりも多くの情報を持っていたから、大金を手にすることができるのです