361.世界で通じる子供の育て方 サッカー選手を目指す子供の親に贈る40のアドバイス 浜田満

サッカーというスポーツは、ほとんどすべての時間で「判断を伴った実行」が求められます。そのため、最も重要なことは「判断基準のトレーニング」をし、子供たちが自分で考え、判断できるように誘導するのが、世界基準の指導方法となっています。  ですが、日本人の指導者はこの部分を鍛えることが最も苦手です。大多数がそのように指導されたことがないからです。これは指導者が悪いというよりは日本の教育の問題であり、インプットされていないことをアウトプットできるはずはないのです。


例えば、ドリブルひとつをとっても、顔が上がっているかどうか、左から敵が来ている時には右足でドリブルしながら、敵を腕でブロックできているかなどの細かい部分について、指導者は細かく指導してくれないことが大半です。私が観た小学生の選手でドリブルをしながら相手が来る方向の逆にボールを持ち替えてドリブルできる選手は100人に1人いるかいないかです。トレーニング時には1人のコーチが少なくても 10 人、多ければ 20 人ぐらい同時に観ないといけないこともあり、細かいところまで観ていられないのです。しかしながら、サッカー上達における決定的な部分は細部に宿るのです。
                

これまでにたくさんの親御さんと接する機会がありましたが、どんどんレベルが上がっていく子供の親には
共通点があります。それは「子供の主体性を引き出す力が高い」ということです。子供が自分からやりたいと思えるような仕掛けをするのは、親の大事な役割です。引き出し方は、それぞれの子どもの性格や環境によって違ってきます。
                

しかし、スタジアムであれば、自分で観るものを決められます。サッカーでは1人の選手がボールに触っている時間は、 90 分間の中でわずか2~3分しかないというデータがあります。つまり、それ以外の 87 分はボールに触っていない、いわゆる「オフ・ザ・ボール」の状態です。
                

日本ではボールを持っている「オン・ザ・ボール」のプレーばかりがクローズアップされます。ボールを持っている時だけではなく、ボールがない時にいつ、どの方角を見て、どういう風にポジション修正をし、いつ、どのように動き始めるのか、そしてギアチェンジのタイミングなど、サッカー選手にとって重要な要素になります。
                

スタジアムにサッカーを観に行ったら、子供がチームでやっているポジションの選手だけを一試合追いかけてみましょう。そして、その状態でできる限りボールの動きも同時に追うのです。最初は難しいと感じるかもしれませんが、慣れてくれば問題なくできるでしょう。ボールがないところでのポジショニング、ボールが移動していくにしたがって行う細かなポジション修正、ボールを受ける際の予備動作、マークを外す動き、味方への指示、相手とのいろいろな駆け引きなどなど、さまざまなことを行っているのが分かるはずです。そして、ボールをさばいた後、どこに向かって動くのかどうかということもチェックしてみて下さい。
                

1.ボールを受ける時は 80%ぐらいの確率で、ディフェンスの背中の位置(オフサイドの位置)から戻ってボールを受ける。ビルドアップ時は相手のディフェンスの視野から外れ(オフサイドの位置も多い)、落ちてくるタイミングを見計らっている 2.1.の動きをする時は、自分が受けるためと、自分が動いたスペースを味方に使わせるための動きの場合があり、後者の場合は必ずムニル(右FW)に使うべきスペースを手で合図していた 3.ボールを受けて、さばいた後の動き出しが非常に早い。パスを出したら、その足で動作に入っている 4.ディフェンスの際も、自分が追いかける場合は、追いかけながら、まわりの選手にパスコースを切る場所を合図している
                

ピッチ上の味方や相手の状況を把握し(認知)、その状況を判断し、どんなプレーをするのかを決めて(判断)、ドリブルやパスなどのアクションを起こす(実行)。言ってしまえば、サッカーというのはこの3つのプロセスをずっと繰り返し続けるわけです。ですが、日本では小学生年代で多くの指導者が「実行」の練習にフォーカスしているために、「認知」や「判断」といった練習がほとんど行われていないのが現状です。そのため、弊社でやっている個人戦術のトレーニングもプレー分析をした結果、「認知」や「判断」という部分のトレーニングが多くなっています。
                

サッカーでは技術を身につけることももちろん大切なのですが、それと同じぐらい、もしくはそれ以上に次々に変わる状況の中で、その場所へいつ、どのタイミングで、どのように動くかを判断することも大切なのです。これを身につけるには、実行の練習だけでは十分ではありません。実行のトレーニングをしたうえで、
                認知、判断のトレーニングをすることが重要なのです。