363.ダビド・ビジャのサッカー講座 試合で活躍するために大切な11科目

仲間や相手を敬う気持ちを忘れない  サッカーは勝敗を決するために競い合うスポーツです。競い合うなかで、時には相手のプレーにいら立ったり、味方のミスに腹を立てたりすることもあるでしょう。そういったときでも、仲間や相手を敬う気持ちを忘れないことが大切です。  サッカーはチームスポーツなので、味方の協力なしには勝利を得られません。相手に対しても同様で、相手がいなければそもそも試合が成立しません。仲間や相手は感謝の対象であり、リスペクトすべき対象です。精神的にも肉体的にもわざと傷つけるようなことは、決してあってはならないことなのです。  トレーニングのなかでも、リスペクトする気持ちを忘れて衝突するような場面に遭遇することがあります。そういったときは、対話をもって解決するようにします。どういった行為が相手を不愉快にさせたのかを理解させ、どう振る舞えば解決できるのか導いています。


仲間を敬う気持ちは、のちに献身性を生み出します。献身性は、チームスポーツに欠かせない要素です。仲間のために、チームの勝利のために、時には自己犠牲をともなうプレーが必要になります。そういった献身性を養うためにも、仲間たちをリスペクトする気持ちを育んでいくのです。
                

また、日本人は強い規律性を持ち、監督やコーチから言われたことを忠実に実行しようとする選手が大半です。それは良い面もありますが、自分で考えて実行するのが苦手になる要因となっているように感じます。それは自分で的確なプレーを判断できる基本的な戦術面の理解不足につながっています。それが一因となり、日本人プレーヤーは戦術の理解が世界に比べると劣っていると言えます。
                

それゆえ、特に日本では、考えながらプレーすることに重点を置いて選手たちにアプローチしています。そうやって戦術面を伸ばすことで、高い技術力や敏捷性といった才能も開花させられると信じています。  もうひとつ日本人プレーヤーの特徴として、失敗を異常に恐れる傾向があります。成功確率の低いプレーに対してチャレンジするのではなく、失敗するくらいならチャレンジしないほうがいいといった思考が働くようです。
                

スペインをはじめとする欧米では、まずチャレンジすることを選択する傾向があります。やってみて、うまくいかなかったときに対策を練っていきます。  この特徴は、子どもたちを取り巻く環境が大きな要因になっているように感じています。ですが、DV7のトレーニングを通して、その感覚をなんとか変えていきたいという使命感を持つようになりました。
                

高い技術力を効果的に使うには、状況に応じた戦術的な判断力が必要です。高い技術力と戦術的な判断力の両方を持ち合わせた選手が、本当に上手なサッカー選手と言えます。
                

例えば、パスを受けるときにボールが来る方向に体の正面を向けているのは、大半の状況で誤ったプレーと言えます。味方や相手の位置を確認して、パスを受けた直後のプレーで行きたい方向やパスを出したい方向が見えるような体勢を整えておく必要があります。つまり、ボールと次のプレーで向かう方向の両方が見える位置に体を向けるのが、正しいプレーです。
                

また、正しい体の向きでプレーできると、良い体勢でボールを受けられて、次のプレーへスムーズに移行できます。誤った体の向きでボールを受けると、体勢が窮屈になり次のプレーが制限されてしまう場合があります。  パスを受けた次のプレーでパスを出す選択をした場合、ボールが来る方向から遠いほうの足のインサイドでコントロールして、近いほうの足のインサイドでパスを出すのが基本です。そのために、あらかじめ蹴り足を振りやすい方向に体を向けておきましょう。
                

正しい体の向きでボールを受けられれば、止めてから蹴るというふたつの動作だけで素早くプレーできます。しかし、体の向きが正しくなければ、止めてから蹴るまでに、蹴りやすい位置へボールを動かすという動作が加わることになり、プレーが遅れてしまいます。素早くゴールに近づくためにも、相手からのプレッシャーを軽減するためにも、常に体の向きを意識してプレーしましょ
                

体の向きは、次にどういうプレーをするか決断した表れです。さまざまな要素を判断材料にして、速いプレーをできるように準備した結果が表れます。次のプレーがうまくいかなったときに、体の向きを振り返ることで決断に至る過程を見直すことになり、正しい体の向きを身につけられてレベルが向上していきます。
                

また、日本の子どもたちは小さい頃から取り組む競技をひとつに絞る傾向があります。もちろん専門的に集中することで良い面もありますが、コーディネーションという視点では良い印象がありません。取り組む競技を絞ることで、身につく体の使い方に偏りが生じるからです。それは子どもの可能性を制限してしまうことにつながりかねないので、小さいうちはさまざまなことにチャレンジすべきだと考えています。
                

現在DV7は世界7カ国で展開していますが、日本校の子どもたちの技術力には目を見張るものがあります。プロ選手のなかにも世界トップクラスのスキルを持つ選手が多く、日本はグローバル・スタンダード以上に技術力の高い国と言えます。  一方で、日本の選手たちは平均的に、戦術的な判断力が劣っているように感じています。おそらくフリーキックや1対1でのドリブルなど、一部分を切り取ったプレーではスペイン人選手より日本人選手のほうが技術力は高く、うまく感じられることもあります。  ですが、現状ではスペイン人選手のほうが戦術的な思考が洗練されているため、実際の試合のなかでは日本人選手よりスペイン人選手のほうが活躍してしまうという現象が起こります。  日本人選手は試合のなかでの技術の生かし方を理解できていないことが多いと言えるでしょう。
                

日本人選手はひとりでの練習に多くの時間を費やしている傾向にあります。それゆえに、キックやボールコントロールなどの個人技術は高水準になっていきます。一方で、スペイン人選手はひとりで練習することはほとんどなく、必ずと言っていいほど友達などとゲーム形式で取り組んでいます。そのなかではどこでパスを受けるべきか、どの味方へパスを出すべきかといったように、味方への意識が高まっていきます。
                

 コントロール・クラシコは、向かってきたボールの勢いを限りなくゼロに近づけて、しっかりと止める技術のことを言います。一方のコントロール・オリエンタードはボールの勢いを殺すと同時に、次のプレーを考えてそれを実行しやすい位置へ動かす技術です。
                

スピードを上げて前進するときは足を立てるように足首を伸ばした状態でアウトサイドでタッチしながら運ぶと、走るフォームを崩さずに体をスムーズに動かせてスピードに乗りやすくなります。  このときにスピードの強弱をつけられるようにしましょう。自分の進むスピードの強弱と比例させ、ボールタッチの強弱を合わせるようにします。
                

運ぶスピードを上げても、可能な限り細かなボールタッチを心がけましょう。できるだけ多くボールにふれながら進み、ボールとの距離が離れすぎないようにします。ボールとの距離が遠くなると相手に奪う機会を与えてしまうからです。  また、細かなタッチだと目まぐるしく変わる状況にも対応しやすくなります。パスを出すチャンスができればすぐにキックへと切り替えられますし、新たなスペースができればすぐにそこへ向かうための方向転換ができます。ボールとの距離が離れている状態だと、変化した状況に対応しようとしても足元にボールがなく、次のプレーが遅れることになります。普段から細かなタッチを心がけておけば、常にボールが足元にある状態になるので、どのような状況の変化にもすぐに対応できます。
                

スピードに乗っていない止まった状態から仕掛けると、自分が加速する間に相手に追いつかれる可能性が高まります。フィジカル的な能力で勝っていることがわかっていない限りは、止まった状態から対面した相手に仕掛けるのは得策とは言えません。
                

フェイントを目的とせずタイミングを重要視  相手を抜き去るレガテにおいて、最も重要視すべきはタイミングです。スピードに乗って相手との距離を詰めて、適切な距離感で仕掛けてかわします。フェイントなどは必要なく、誰にでもできる技術なのです。  日本人選手は、難しいフェイントを覚えないと相手を抜けないと思っているように見えます。いろいろな難しいフェイントにチャレンジすること自体は大切なことです。しかし、試合中にそのフェイントが目的にすり替わると、結果としてプレー速度が遅くなってしまいます。何よりも優先すべきはプレースピードで、速くゴールへ迫れるプレーを選択できる力を養いましょう。
                

その適した距離まで詰めたら、半身の体勢で構えます。  相手に対して平行になるような両足がそろった状態で構えると、相手に抜かれやすくなります。半身になって相手を片側へ追い込むように守ると、スピードで勝負されてもターンの必要がなく簡単には抜かれません。また、前になった足でボールへのアプローチが容易になります。  両足がそろった構え方だと、相手にかわされたあとは必ずターンが必要になり、その分の時間だけ相手を追いかけるのが遅れてしまいます。それに、ボールへのアプローチでは大きく足を踏み出さなければならず、遅くなってしまいます。  向かってくる相手に対して、垂直になるような半身での構え方を習得しましょう。
                

素早いプレーとは、速く走ったり、速い弾道のボールを蹴ったりというような肉体的な能力に起因するものではありません。先に考えてから実行することで、プレースピードを劇的に向上させられます。
                

考えながらプレーしているかどうかは、科目①で言及した「体の向き」に表れます。  攻撃時であれば、自分がどこにポジショニングしていて、どの場所で受けて、どうつなげば相手ゴールに迫れるかを考えなければなりません。それらを考えたうえでボールを受けたら、体の向きは次にプレーする方向を向いているはずです。ボールが来る方向しか向いていないと、現状に対応することで精いっぱいになっていると言えます。  守備時においても同じで、次のプレーを考えていれば状況に応じて体の向きやポジショニングが変わっていき、より一層素早いプレーを実現させられます。
                

しかし、どんなに上手な選手でもシュートは外してしまうものです。トップクラスのプロ選手でも1試合に4~6本のシュートを打って、1点を取れるか取れないかという確率と言われています。ほとんどを成功させるパスの確率と比べると、その成功率は極めて低いのです。それでも彼らは勝利のために、失敗を恐れずチャンスがあればシュートを打ち続けます。
                

シュート以外のプレーにも言えることですが、どんなことも失敗を繰り返して成長し、うまくなっていきます。ですが、シュートはパスなどと違いそもそも機会が少ないプレーで、失敗する機会ですら貴重なのです。それなのに、ミスを恐れて安全なプレーを選択していては、もったいないと思いませんか? うまくなるためには失敗を恐れずに、積極的にチャレンジすることが必要なのです。
                

これまでは、シュートのときに考えるべきポイントをあげてきました。しかし、実際に試合を経験したことのある人には理解してもらえると思いますが、これまでにあげた要素をシュートする前の一瞬で考えるのは不可能です。  レベルが上がるにつれて、ひとつひとつのプレーの時間は短くなります。つまり、トップクラスの選手ほど無意識で判断してゴールを決めていると言えるでしょう。そういった選手は、意識した練習を繰り返し、無意識でもできるようになるまで努力してきているのです。
                

相手のプレッシャーが効果的で近くにパスコースがないということは、相手は前方に人数をかけています。その後方はこちらの数的優位、あるいは数的同数な状況が生まれているはずです。相手が迫っていても優位なところを見つけ出して、そこを狙って蹴り出す意識を持ちましょう。  ボールを奪われて失点するかもしれないと恐れを抱き、やみくもに大きく蹴り出していては、いつまでたってもこちらが有利な状況はつくり出せません。数的同数のゲームである限り、相手が取る陣形の重心が偏ればどこかにスペースは生まれて、味方が有利になるところがあります。そこを見つけ出す力を養い、狙って長いボールを蹴れるようになりましょう。