347.No.1理論 ―ビジネスで、スポーツで、受験で、成功してしまう脳をつくる「ブレイントレーニング」 西田文郎

人の脳は感情、イメージ、思考の三つがプラスになれば、必ず成功できる仕組みになってい

 

Y君の場合は少々極端かもしれませんが、一般に東大に合格した受験生は、他の受験生より、勉強時間が少ないというのは統計的にいえることだろうと思います。睡眠時間を削って七時間も八時間も机にしがみついていた東大合格者は、私の知る範囲ではほとんどいません。しかも彼らはスポーツを楽しんだり、楽器をいじったり、読書に熱中しながら高校生活をエンジョイしています。勉強漬けの受験生活などというのは、不合格の兆候であると考えたほうがいいの
                

ところがY君は「合格したい」とは少しも思っていませんでした。ウソだと思われるかもしれませんが、「合格するのが当たり前」と考えていました。当たり前ですから趣味や楽しみを犠牲にする必要もないし、睡眠時間を削ってまで、ネジリ鉢巻で頑張る理由などまったくないのです。  東大の合格者には、両親のいずれかが東大出身者であるケースが非常に多いというデータがあります。ここから「頭のよさは遺伝する」という結論を導き出すこともできそうですが、たくさんの受験生を見てきた経験からいうと、東大合格は遺伝的な頭のよし悪しが問題になるほど難しくありません。  東大出身の親を持つ東大生がなぜ多いかというと、親と同じ大学に入るのは「難しくない」「当たり前だ」と考えられるから
                

できる子とできない子の違いは知能指数でも遺伝でもありません。心、つまり頭の中にある「思い」だけ
                

七時間も八時間も勉強したら東大には合格できない、などと暴論を吐く気は毛頭ありません。受験勉強一辺倒の〝ガリ勉〟で合格する人もいるでしょう。でも、そういう努力はときに危険です。苦しさを我慢しながら脳を働かせて合格しても、バーンアウトすなわち燃え尽き症候群が待っています。人の心は、喜びや楽しみという栄養を絶えず脳に補給していないとエネルギーが枯渇してしまうの
                

したがって勉強に対する、その子の「思い」を変えてやると、小学校や中学校程度の勉強なら成績はアッと言う間に上昇します。「好きだ」「できる」「面白い」という思いは、人の能力を変え
                

たとえば、私が自分の子に将棋を教えるときは、三回に一回はわざと負けてやります。勝てない子どもがかわいそうだからではありません。負けてばかりで、勝つ喜びを知らなければ、将棋が嫌いになってしまうからです。父親に勝てたという喜びがあれば、将棋に対してプラス感情になり、もっと上手になろうと意欲的になり
                

成功者というのは、必ず「自分は金儲けが上手だ」と思っています。それを意識し、自覚しているかどうかわかりませんが、潜在意識には間違いなく「おれは金儲けがうまい」という思いがあり
                

どんどんお金が入ってくる人と、どんなに努力しても貧乏から抜け出せない人のあいだには、じつはその違いしかないのです。金儲けが上手だと潜在意識が判断していれば、脳もそのように働きます。しかし下手だと潜在意識があきらめていれば、千載一偶のチャンスを前にしても脳が起動せず、才能は発揮されずに終わり
                

人間の能力差は潜在意識に存在しています。そして、その潜在意識は、最初のいくつかのチャレンジに、たまたま成功したか失敗したかで、ほとんど決定されてしまうのです。逆に言えば、勉強の苦手な子が優等生になったり、金儲けの下手な人がどんどん儲けられるようになるのは、いかに簡単かということです。潜在意識にインプットされた記憶データを変えてやればいいのですから、ことは非常に簡単
                

どもの指導は〝 No. 1を目指せ〟です。アマチュア・スポーツの選手ならオリンピックを、プロ野球なら大リーグを、サッカーならイタリアのセリエAを目指せと指導します。セールスマンはトップセールスマンを。経営者なら、その分野で日本一の企業を目標にしなさいとお話しし
                

なぜかというと人間は、もともと怠け者にできていて、ある程度で満足すると、必ずそこで進歩が止まってしまうから
                

ユダヤ人の精神分析学者フランクルは、自分の体験から、ナチス強制収容所ユダヤ人の生と死を分けたのは体力でも精神力でもなく、希望だったと言っています。同じ過酷な状況に置かれても、希望を持ち続けることができた人間は生き延び、それを失った者は病気や衰弱で次々に死んでいったのだと言い
                

 

成功から見れば、それまでの失敗や苦しさ、努力も、単なるプロセスです。間違いなく成功するとわかっていますから、不安や心配、焦り、迷い、ためらいのような否定的な感情が起こらず、楽しみながら前進できるのです。「こんなことをして何になるんだ」とか「失敗したらムダじゃないか」というマイナス思考も消えます。必ず報われるとわかっているので、辛い努力も楽しくなるの
                

 

思考とイメージと感情の三つがともにプラスになったメンタルタフネスを、「メンタルヴィゴラス状態」と呼び
                

 

嫌いという感情は自己防衛本能に結びついています。もともとは自分の生命を危うくするような敵や危険に対して発生するものですから、そこから逃げ出そうとか、戦おうという無意識的な心の動きをともなっています。ですから緊張します。脳幹が刺激を受けて自律神経やホルモンの状態が変わり、血圧が上昇するとか、呼吸が早まるといった生理的変化が起こってイライラするの
                

 

人が「こうありたいな」と願う自分は、必ずヴィゴラス状態にある自分です。仕事に没頭する自分。誰かを好きで好きで仕方ない自分。趣味やスポーツに熱中している自分。あるいは、どんな逆境でも敢然と戦える自分。自信のある自分。まわりの人に愛情を感じ、ありのままに自己表現できる自分……。どれも扁桃核が肯定的で、感情とイメージと思考が一体になったメンタルヴィゴラス状態
                

 

そうなれば、ドーパミンのおかげで楽しく愉快になれますから、私たちの脳は常にヴィゴラス状態を求めています。言い換えれば、成功や幸せは、多くの人が思っているように苦しみ、もがきながら必死で手にするものではなく、楽しみながら獲得するものです。また楽しくなければ、どんなに努力しても成功できないということです。もし、あなたが成功に見放されているとしたら、自分は苦しみながら頑張っているのではないかと考えてみて
                

 

私は仕事がらトップ企業の経営者とお話しする機会が多いのですが、「自分は怠け者です」という社長さんがたくさんいます。どちらかというと大きく成功している方ほど、そうおっしゃいます。怠け者の成功者のほうがむしろ多いのです。  状況が目まぐるしく変化するビジネス界で頭角をあらわすには、努力より大事なものがあります。今は上昇している株価も明日は値を下げるかもしれない。新規に事業展開しても、新しい技術が開発されれば、せっかくの設備投資がムダになる。アイデア一つで会社の未来が大きく変わってくる。そんな世界で成功するにはツキが絶対条件です。努力したから成功するのではありません。ツキがあったから、その努力が生きたというのが
                

 

野生動物を見て美しいと思うのは、全身に溢れた自信のためではないでしょうか。動物に〝自分〟とか〝自信〟という意識があるかはなはだ疑問ですが、少なくても野生動物にマイナス思考はなさそう
                

 

しかしペットや家畜は違います。ひどく自信なさそうに見えるときがあります。上目づかいに主人の顔色をうかがう犬など、完璧なマイナス 思考 です。過去に叱られた経験が脳に焼きついていて、「また叱られるのではないか」という、マイナス 感情、マイナス イメージ に陥っているに違いないの
                

 

犬さえマイナス 思考 になります。犬よりはるかに発達した脳に、膨大な記憶データを蓄えている人間がマイナス思考になるのは、少しも不思議ではありません。頭がいいから人は自分が信じられない、成功を信じ切れない
                

 

ヴィゴラス状態は「~できる」「できて当たり前」という思考です。プラスなのは思考だけでなく、イメージも感情も同時にプラスになっています。具体的に言うと成功や優勝、幸せな家庭が明確にイメージでき、それが実現した際の喜びや感動まで感じられる。いわば、未来を先取りした「もうできちゃった」のウキウキワクワク状態
                

 

 ところが長期目標を持つということが、私たちのような凡人には非常に難しいのです。社員教育セミナーで参加者と話してみると、人生目標どころか一〇年後のイメージを抱いている人さえめったにいません。たまに一〇年後二〇年後の明確なイメージを持つ人がいます。人事担当者に聞いてみると、やはりズバ抜けて仕事ができ、将来を嘱望される優秀な人材
                

 

 子育てでは「叱るよりホメろ」と言います。なぜホメることが大事かというと、相手を承認することになるからです。人間は誰かに認められたい、承認されたいという欲求を持っています。したがって、承認欲求が満たされると、その喜びを再び味わいたくなり、子どもは自分から進んで伸びようとするの
                

 

これまでの話から、もうおわかりと思いますが、成功は人間的な向上なくしては不可能
                

 

成功者が共通して持っている「運命的な力を感じる能力」のキーは感謝です。感謝がなければ、自己愛を超えられません。過去と現在の環境、あらゆる人間関係をプラス思考で受け止めることは、感謝がなければ絶対にでき