280.日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門 藤沢 数希

また、最近の日本の政治にはみんなが落胆していると思いますが、日本は民主主義の国です。国会議員は我々が選んでいるのです。残念ながら、民主主義の国で、政治家のレベルというのは、国民のレベルでもあるのです。そして彼ら国会議員が、官僚を使って、いろいろな経済政策を考え実行していきます。ところが、どういう政策が我々を豊かにしてくれるのか、経済学の知識がないと判断できないのです。さらに困ったことに、経済学の結論は、我々人間の直感に反していることが多いのです。我々が自然に身につけている道徳心から経済政策を考えると、往々にして逆の結果になってしまうのです。

 

こういった金融商品は、世界各国の年金基金や富裕層の資産を運用するヘッジファンドなどが購入していました。年金基金のような保守的な組織のファンドマネジャーは非常にサラリーマン的で、強欲に収益を求めるというよりは、社内の細かい規則を守ることや損失を出したときの正当な言い訳の準備を何より重視します。そんなサラリーマンのファンドマネジャーがトリプルAの格付けがついたこのような金融商品機械的に買い集めたのです。政府に認可された原子炉を絶対安全だと思う電力会社のようです。

 

カネボウ日興コーディアルなどの過去の悪質な粉飾決算では、ありもしない利益を計上して、銀行を騙して資金を融資させていました。しかしライブドア粉飾決算は、少なくともそのお金は実際に儲けていたのであって、それを帳簿のどこに書くかの問題だったのです。その点で、通常の粉飾決算とは大きく異なっています。やはり最初に捕まえる人を決めて、それから捕まえるための違法行為がないかどうかを調べ続けた、というのが実際のところではないでしょうか。

 

もちろん、外資系の会社でも日本では日本の法律が適用されます。答えは、形式的にはほとんど誰も「クビ」になっていない、です。会社から、自分の意思で自発的に辞めるようにいわれるのです。ここで辞めないといってもいいのですが、かなりの金額が積まれて、もし、辞めてくれたら正規の退職金にプラスして、これだけ払いますよと説得するのです。 外資系の会社でリストラされた人が、ニコニコして結構楽しそうに1年ぐらい海外旅行に出かけたりするのは、この割増し退職金のためです。業界用語でパッケージと呼びます。たとえば、基本給が1500万円の人をクビにするのは、会社としては半年分の750万円ぐらいでサインしてもらえたらラッキーで、こじれにこれじれて裁判になっても2年分の3000万円ぐらいで和解できるだろうと考えているのです。大きな金融機関だと3000万円のコストなんて米粒みたいなものです。

 

「被告人は『ファンドなのだから、安ければ買うし、高ければ売るのは当たり前』と言うが、このような徹底した利益至上主義には慄然とせざるを得ない」と裁判官は堂々と述べたのですが、これには世界中のファンド関係者が慄然としました。なぜならファンド・マネジャーとは顧客の利益のために合法的に1円でも多く稼ぐことが最大のモラルであるし、安く買って高く売るのは資本主義のもっとも基本的なルールです。日本は

 

が通用しない国だということを強く世界に印象づけてしまいまし

 

かつて堀江氏が言っていたように、やはり日本の法律とは解釈次第で誰でも罪人にできてしまい、日本の権力層に都合の悪い人間が出てくると簡単に刑務所に送られてしまう、ということなのかもしれませ

 

確かに資本主義社会、市場経済の中では常に競争を強いられ大変ではありますが、これは決して弱肉強食の世界ではありません。なぜならば市場での自由競争というのは、他者をいかに喜ばせることができるか、という競争だからです。

 

ところが日本では、いったんエスタブリッシュメントの側の高い地位に就くと、この相互監視から特権的に逃れることができるようなのです。まさに特権階級です。そして司法も行政も、日本の大企業が次々に導入する買収防衛策や株式の持ち合いを容認し、時に自らも積極的にそのインナーサークルに取り込まれていきました。そして日本の株式市場は、重要な機能を徐々に失っていったのです。このように新陳代謝しなくなった日本の株式市場は非常に魅力の乏しいものとなりました。

 

要するにプロが競争をする自由な市場では、将来の株価や為替が上がるか下がるかを正確に予想するのは不可能なのです。これが経済学から導き出される結論です。だから、証券会社のエコノミストの株価や為替の予想がぜんぜん当たらないのは、それこそ経済学の予想通りなのです。 そもそも将来の株価や為替を正確に予想できたら、誰も証券会社のエコノミストなんていうしょうもないサラリーマンを続けるわけがないじゃないですか。自分でトレーディングしてお金持ちになりますよ。なぜ多くの人はこんな5歳の子供でもわかるような簡単なことがわからないのでしょうか?

 

たとえば先ほどの株式市場の例で考えると、プロ同士が激しく競争するので、将来の売上が伸びそうな会社、つまり人々に必要なモノやサービスをうまく供給できる会社が正しく評価され高い株価がつき、逆に時代に取り残されて消費者に必要ないモノばかり作っている会社の株価は安くなるのです。その結果、消費者に必要な会社ほど高い株価で大きな資金を調達できる一方で、消費者に必要とされていない会社は株価が低迷して資金調達もままならなくなり、やがて市場から退場させられます。

 

要するに株式市場の自由な競争により人々に必要な会社が生き残り、そうでない会社が淘汰されていきます。これは資本、つまりお金という国民の貴重な資源を国民の幸せのためにより効率的に使える会社にどんどん配分していくしくみなのです。

 

ボリュームの点で、日本における重大な格差は、大企業の中高年正社員や公務員と若年層の非正規社員との格差で、これは市場原理が働かないから引き起こされています。 問題は同一労働同一賃金というマーケット・メカニズムからみれば極めて当然のことが、日本の労働市場では実現していないことです。正社員があまりにもガチガチに法律で保護されているので、経営者はダメな正社員の給料を減らすこともクビにすることもできません。そのシワ寄せが派遣社員のような非正規労働者や、採用数が大幅に減らされる新卒の学生にすべて押し付けられてしまっています。

 

そして、新しい産業を作り出すのは起業家であり、そういった起業家に資金を提供するのが投資家なのです。

 

長期で見れば失業も倒産も社会にとって悪いことではありません。新しい産業が生まれ、人々が豊かになっていく過程で生じる必然だからです。失業や倒産はちょっとした成長痛なのです。時代に合わせてうまく変化し適応していく国家だけが、長期的には豊かになっていくことができるのです。

 

しかしこういった会社は明らかに人々の利益に反します。このように競争市場の外で発生する経済問題を外部不経済といいます。外部不経済があって、会社や人の行動が、他の会社や他の人に迷惑をかける場合は、政府は的確に規制する必要があります。地球温暖化など、世界的に環境問題が注目されていますが、これはまさにグローバルに進展する外部不経済に、どうやって世界各国が取り組むかというむずかしい問題です。環境問題は今後ますます重要な国際的な課題になっていくでしょう。

 

つまりGDPとは1年間に一国で生み出された付加価値の合計なのです。 GDPは支出の合計でもあり、また所得の合計でもあります。この関係を三面等価といいます。最終的に消費者に届けられる新しく生み出されたモノやサービスの売上の合計がGDPでした。売上ということは必ず誰かが買っていますから、これは誰かの支出であり誰かの所得になっているのです。 GDPが国民の幸福のためになぜ重要かというと、GDPというのは国民(正確には日本の居住者) の所得の合計だからです。何でもお金で買えるわけではありませんが、所得が増えると大体の人は幸福になります。

 

要するに貨幣というのは信用のみで成り立ち、それはある意味でバブルなのです。貨幣というのはバブルの中のバブルであり、バブルの親分です。 今、世界中の人がなんの疑問も持たずに毎日使っているお金というのは、世界中の人がなんの疑問も持たずに毎日使っているというその事実こそが、その貨幣の価値の源泉だという、じつはとても不思議なものなのです。

 

このように何とも交換できないお金を、法定不換貨幣(Fiat Money) といいます。現在、世界の通貨のほとんどは法定不換貨幣です。ニクソン・ショックが起きた時は、世界の通貨の信用が保てるのかどうか、多くの識者が心配しましたが、現在の世界の状況を見渡すと、その心配はまったく杞憂に終わったようです。

 

これを国債の発行市場といいます。一番高い値段を提示した銀行が国債を買います。債券というのは図表210 のように値段が決まれば金利が決まるしくみになっていますので、こうして日本国債金利が決まっていくのです。国債の値段が安くなるほど金利は高くなります。金利が低くなるほど国債の価格は高くなります。

 

それでは、国債の信用とはなんでしょうか? それは結局、国家の徴税権にたどり着きます。国が将来しっかり税金を取って、国債保有者に返済するということが国債の信用なのです。将来の国の税収を企業の利益のようなものだと考えれば、国債というのは債券ですが、むしろ国家が発行する株式のようなものだとわかるでしょう。株価が企業の業績で上がったり下がったりするように、国債価格や国債に担保されている通貨は、世界の国債市場や為替市場で上がったり下がったりします。

 

世の中に流通している現金の物理的貨幣と、銀行が日銀に預ける預金である日銀当座預金の残高の合計をマネタリーベースといい、これは日銀が市中の銀行から短期国債を売買したり、法定準備率を変更して直接コントロールできるお金です。 そしてこのマネタリーベースを元に信用創造で膨らんだ個人や企業の預金残高と手元にある現金のすべてを足したものをマネーストックといいます。マネーストックとは民間が経済活動に自由に使えるお金の総量です。

 

そしてマネーストックをマネタリーベースで割ったものを信用乗数といいます。

 

そこでフリードマンのように市場の力を信じる経済学者は、政府や中央銀行は恣意的に財政政策をしたり金融政策をしても経済は混乱するだけで何もいいことはない。中央銀行マネーストックをGDPの成長に合わせて同じ割合で毎年機械的に増やしていくだけで、他の余計なことは何もするなと主張しました。これが物価を安定させ、経済を安定的に成長させるもっとも正しい方法だというのです。つまり政府も中央銀行も民間の自由な経済活動に口を出すなということです。

 

お金はゼロサム・ゲームではありません。成功した起業家や投資家がたくさんお金を持っていてもそれは他の人から搾取したものではないのです。経済のパイを大きく

 

て、世の中をより豊かにしたのだから、その分の見返りをもらって当然です。こういうお金持ちのおかげで多くの市民はより豊かになったのです。

 

国債は将来の税金の先食いなので、将来時点でいつかは増税してつじつまを合わせなければいけません。増税すると乗数効果と逆の効果があるので、その時国民は大変な痛みを味わうわけです。つまり政府の財政支出により目先の景気対策にはなりますが、それは将来のどこかで借りを返さなければいけないのです。

 

景気対策財政出動し、その効果が切れた時にその痛みを打ち消すためにさらに財政出動をするという悪循環は、まるで麻薬中毒者が麻薬の禁断症状の苦しみに耐えられず次々と強い麻薬を打っているようです。そして、最近はとうとう麻薬がなくなってしまおうとしています。今まで痛みはすべて麻薬でごまかしてきたので、麻薬をやめれば恐ろしい禁断症状に見舞われるでしょう。日本経済はこれからこの禁断症状に耐えられるのでしょうか?

 

日銀が短期金利を下げると、ふつうは長期金利も下がり、住宅ローンの金利や銀行が企業に貸し出す時の金利も下がるので、家を買いたい人や事業を起こしたり拡大したい人は安くお金を借りられるようになります。その結果、積極的に借金する人が増えるでしょう。そうすると信用創造により市場に出回るお金が増殖していき、経済が活性化するのです。

 

もちろんこれが行き過ぎると、銀行からお金を借りて株や土地などを買っているだけでどんどん儲かるので、金が金を生むバブルになってしまいます。そのようなバブルの恐れがある場合は中央銀行金利を上げて金融を引き締めるわけです。バブルが起こると株の時価総額や土地の値段から計算する国富は増えていきますが、バブルがはじけた時に経済が混乱し、長期的には国富がかえって減ってしまいます。よって中央銀行は、バブルが起こらないように金融政策を運営していく必要があるわけです。

 

ところで、現金を持つコストとはなんでしょうか? それは金利です。国債を買えば金利を得られるのに、現金で持っていると金利を稼げません。現金を持っているとこの金利の分をいつも損するのです。それでは現金を持つメリットは何でしょうか? それは流動性です。流動性というのはいつでも使いたい時にお金を使えるということです。現金を持っていたら何かほしいモノがあればすぐに買えます。

 

デフレに対して日銀だけを責めるのはちがうのではないかと思います。ゼロ金利政策をしていても、民間企業が積極的に銀行からお金を借りないという日本の投資機会のなさこそが根本的な問題でしょう。

 

つまり成長率 金利の世界では、銀行からお金を借りて事業を起こしたり投資をすると損することもあるし、得することもあるけど、平均的には儲かる確率の方が高いという状況です。逆に成長率 金利の世界では、銀行からお金を借りて事業を拡大すると全体では損する確率の方が高くなってしまいます。だから中央銀行は景気が悪くなって物価も下がり気味だと金利を経済の成長率より下げて投資意欲を後押ししようとしますし、逆にバブル気味で資産価格がどんどん上がっているような状況では金利を上げるのです。

 

しかし技術の先端にある先進国では、すでにこっちの労働生産性はかなり高いですし、インフラも整備されているので、簡単には労働の質を高めることはできません。そして日本の場合は少子高齢化でどんどん労働者が減っていってしまいます。つまり日本の潜在成長率はどうしても世界の他の国々より低いのです。金利というのは中央銀行が金融政策により潜在成長率を基準に上下させるので、成長率の低い日本は、世界の他の国々よりも低い金利になるのは当たり前なのです。

 

そういう意味で日本の慢性的な経済の停滞を解決したいならばボウリングの一番ピンはデフレをなおすことではなく、潜在成長率を上げることなのです。デフレは経済の停滞の原因ではなく結果です。デフレからの脱却はボウリングでいえば最後に倒れるピンです。

 

ところが日本では、成功したベンチャー企業の経営者を格差格差と騒いでつぶしたり、ヘッジファンド投資銀行マネーゲームだハゲタカだといって追い出そうとしたりで、むしろ自ら潜在成長率を下げるようなことばかりやっているのです。また現在の農業や医療や教育のように規制と既得権益でガチガチにしばられている分野は、少し規制緩和してどんどん企業が参入できるようにするだけで、いっぺんに生産性が向上するでしょう。イノベーションは最先端のハイテク分野だけの話ではありません。

 

もちろん物理現象とはちがうこともあります。幸いなことにそのちがいこそがグローバル経済のすばらしいところを照らし出します。経済のグローバリゼーションで、世界中の土地や労働力や天然資源などがより効率的に使われるようになるので、世界全体の富のパイは必ず増加するのです。確かにグローバリゼーションで富める者はもっと富んでいき格差が開く可能性はありますが、それによって底辺も同時に押し上げられていくのです。

 

途上国の中でも特に貧しいのは農家です。途上国の農家の人々の人件費は非常に安いし土地もたくさん余っているので、先進国のすぐれた農業技術を移転して、そこで作った食料を先進国に輸出すれば、途上国と先進国の双方に大きな利益をもたらすことは明白です。ところがそうなると競争できない先進国の農家とそこに群がるさまざまな利権が、決してそういうことが起こらないように規制でがんじがらめにしてい

 

しかしここでもまた日本国政府はどういうわけか時代遅れの規制を放置して、東南アジアからの看護師等の人材を受け入れることにも消極的なのです。おかしな規制さえ取り払えば、介護や育児のサービスは日本では大きなビジネスになりうるのです。この分野でがんばるベンチャー企業の中からユニクロ柳井正さんのような億万長者が生まれてくるかもしれません。

 

結局のところ、途上国の発展を妨げているひとつの要因は、このように先進国の一部の既得権益なのです。彼らが「強欲な金融資本主義から日本を守る」「日本独自の伝統を大切にする」「食の安全」などという耳ざわりのいいことをいって真実をねじ曲げ、偽りを作り出しているのです。

 

民間と政府の貯蓄、民間と政府の投資をまとめると、次のような関係式が導けます。 貯蓄 投資 = 輸出 輸入

 

つまり外国との貿易が黒字というのは、国内の貯蓄超過とコインの表と裏の関係にあるのです。逆に外国との貿易が赤字だと、外国からお金を借りて、国内で貯蓄した以上に使ったということになります。これが貯蓄・投資バランスの恒等式です。

 

日銀のゼロ金利政策による超金融緩和は世界中に潤沢なマネーを供給して、これらの国の住宅価格高騰などのバブルの発生に一役買っていました。金利の安い日本円でお金を調達して、そのお金が世界中の投機資金として回っていたのです。円を借りて、それを国外のさまざまな金融商品に投資するという大規模なキャリー・トレードが起こっていたのです。

 

「インフレ国の通貨は長期的には下落する。または、デフレ国の通貨は長期的には上昇する」

 

日本はデフレがずっと続いているので、円高が進むのは当然なのかもしれませんね。

 

「高金利通貨は下落する。または低金利通貨は上昇する」

 

金利が非常に低い日本円が上がっていくのは、じつはなんの不思議もありません。

 

ところで中央銀行が利上げするとよく通貨は上昇します。逆に利下げすると通貨は下落します。ここでニュースや一般向けの経済誌では「高金利で魅力が増したので通貨が買われて上昇した」というような説明がされますが、この説明は正確ではありません。今までの説明で金利が高い通貨は下落する傾向があるといったのと、こういう金利のニュースはまったく矛盾していません。むしろ金利を上げるとその通貨が(瞬間的に) 上昇することを非常に明確に説明しています。

 

つまり、変動相場制を採用している国では、景気浮揚対策は金融政策に頼るべきだという結論になり

 

日本は失われた 20 年の間、景気対策として巨額の財政出動を繰り返し、天文学的な公的債務を積み上げました。しかし

 

によれば、財政政策の景気浮揚効果の多くは諸外国に逃げてしまった可能性があります。実際、この間、財政出動を繰り返す日本以外の世界経済は大変好調であったということは、マンデル・フレミング・モデルが示唆する通りであったとも読み取れます。日本国政府は、無為に公的債務を積み上げてしまい、その分の景気浮揚効果の多くが外国にいってしまったのかもしれませ

 

戦争によって失うものが増えるからでしょう。自分の商売のお客さんがいる国に爆弾を落とそうとは考えないでしょう。海外転勤や海外移住によって、自分の親戚がたくさん住んでいる国にミサイルを打ち込もうとも思いません。このようにヒト・モノ・カネが相互に行き交っている国同士では、戦争は非常に起こりにくくなり

 

2011年3月 11 日に東北沖で起きた未曽有の大地震の際にも、アメリカをはじめ世界中の国がすぐさま日本への支援に名乗りを上げました。これも日本が世界中と貿易し、経済の相互依存を深め、また貧しい途上国などに対しても先進国として当然の支援をしてきたからに他なりませ

 

日本が戦争に巻き込まれないために何をすればいいのでしょうか? 僕

 

とても自明なことに思えます。日米同盟を大切にして、アメリカの核の傘に入り続けることです。グローバリゼーションを推進して、なるべく多くの国と経済の相互依存を深めることです。国際社会の中で信頼されて、世界中の国と経済的に深く結びついていることが、安全保障の観点から何よりも重要です。経済の相互依存、必要悪としての核の抑止力を保有する軍事力、このふたつが今後も日本の平和と経済発展にとって極めて大切なの

 

労働力も資金もある分野に余分に投入したら、他の分野で減るのは当たり前です。本来、自由市場の中の競争原理により資源配分されるものが、政府による恣意的な配分に変わることによって国民全体の利益が損なわれるの

 

それでは本当の成長戦略とはなんでしょうか? それはリスクを取って成功した人に報いる税制と、大胆な規制緩和です。高額所得者の所得の半分を税金として取り上げたり、儲かっている大企業の利益の 40%を税金として奪い取ったりして、田舎の兼業コメ農家や特定郵便局長にお金をばらまいて

 

に集団票を買っても、国全体の経済なんかよくなるわけはありませ

 

給料の半分を税金で取られたら、高額所得者はもっとがんばろうという気が起きるでしょうか? シンガポールや香港に引っ越せば税率はたったの 10%ちょっとなのに、日本に残ろうと思うでしょうか?

 

利益の 40%を法人税で取られたら、企業は創意工夫をしてもっと儲けようとするでしょうか? そこそこに経費を使って利益を減らしてボチボチやろうと思ってしまうのではないでしょう

 

日本の税制は法人税と高額所得者に対する所得税が世界最高水準で、その代わり消費税が非常に低いという特徴があります。とりわけ他のアジア諸国と比べて法人税が圧倒的に高く、現在急速に成長しているアジアのマーケットにおいて、多国籍企業の中枢機能は東京から香港やシンガポールに移っています。また、金融やITなどの高付加価値で場所を選ばない職種では、やはりアジアで活躍する高額所得者が東京から香港やシンガポールに流出しています。

 

また、最近は所得税法人税の安い海外にビジネスの拠点を持ち、日本に頻繁に出張してくる日本人や外国人が増えています。そういう所得税を日本に直接は収めない人からも、消費税なら税金を取れます。このように広く薄く、そして平等に徴税できるのが消費税のいいところ

 

また、そもそも財産を形成する時に、すでに所得税やら法人税で税金を収めているのに、さらに残った財産に税金を課すのは二重課税で、税金

 

筋がよくないのは事実です。 その点、やはり資産リッチで所得がない年金生活者からもまんべんなく税金が徴収でき、個人のプライバシーが守られる消費税は好ましいといえます。

 

国税庁による平成 21 年分民間給与実態統計調査によると、平成 21 年末での給与所得者数は約5400万人。民間の事業会社が払った給与総額は約192兆円。192兆円から支払われた民間が収めた所得税は7・5兆円。つまり平均所得税率はなんとわずか3・9%なのです。所得税率を 10%のフラットに引き上げれば、 15 兆円以上の税収増が簡単に実現できるの

 

日本は低・中所得層の税負担がかなり軽い一方で、所得税最高税率(課税所得の1800万円以上の部分にかかる税率) が住民税とあわせて 50%と主要先進国の中でもっとも重いのです。大多数の日本の給与所得者が所得税をほとんど払っておらず、過酷な税が課される高所得者層の人数は極めて少ないので、平均した所得税率はおどろくような低率となっています。これが高

 

者層の海外移住を加速させ、また高所得者の海外から日本への流入を阻んでいるのです。結局はそういったツケが低・中所得者層に返ってくるのであり、愚かなポピュリズム政治ここに極まれりでしょう。

 

さらに消費税を 10%程度に引き上げれば、日本の大きな借金などまったく問題ではありません。日本の財政問題など、じつはその程度の問題なのです。所得税法人税も消費税もフラット 10%にして、人々の労働インセンティブを引き上げ、抑圧されていた日本経済の底力を一気に開放してやりましょ

 

日本は年間3万人以上自殺する立派な自殺大国ですが、会社が社員をクビにできない日本にこんなに自殺者が多いのに、簡単にクビにできるアメリカで自殺者が少ないことをよく考えてみるべきでしょう。 正社員がクビにならないということは、他の会社になかなか空きのポストができないということです。だから日本ではアメリカと違って、サラリーマンが転職するのがむずかしいのです。転職できないから嫌でしょうがない職場でも会社にしがみつく他ないの

 

このように投資家の自らの利益を追求する行動が、社会に必要とされない会社から資金を引き上げさせ、社会をより豊かにできる会社に資金を

 

のです。一見きびしいようですが、こうやって人々が必要とする会社に正しく資金が回り、社会全体がどんどん豊かになっていきます。これが株式会社、そして資本主義社会のすばらしいルールです。

 

ダメな経営者で株価が低迷すると、もっとうまく経営して高い収益を上げられる自信がある他の会社の経営者やファンドなどに買収されてしまうのです。これは株式市場の非常に重要な自浄作用なのです。企業買収を通して産業構造がダイナミックに変化していくことこそが資本主義経済の重要な成長エンジンなの

 

今こそ株式会社、資本主義の原理原則に立ち返り、株主利益、株主の権限を法律通りに尊重する株主資本主義が日本には必要なのです。日本の産業構造は、このような資本市場の活性化なくして蘇ることはないでしょう。資本市場改革は日本経済にとって大変重要な課題です。

 

この奇妙な演劇ですが、じつはけっこう簡単なカラクリです。農協は全国に正組合員だけで500万人以上もいます。とんでもない数の票を持っているのです。そしてこの票で農業族議員がたくさん当選するし、各政党にも大きな圧力をかけることができます。だから政治家は農協に逆らえないし、むしろ積極的に多くの国民から徴収した税金を農業関係者に分け与えてきました。

 

だから政治家と役人が一生懸命やっているのは、農家の一戸一戸の生産性をなるべく下げて、補助金や規制がないと困るような零細農家や週末に副業で米を作っている兼業農家をなるべくたくさん維持していくことなのです。

 

また、日本の農業開放は日本だけの問題ではありません。日本が途上国からたくさん農産物を買えば、途上国は経済的に発展することができます。途上国が豊かになれば、日本が得意とする高級家電なども売り込めるでしょう。 このように経済的な結びつきが強くなれば、日本はいざという時の物資の輸入ルートをさらに強固にできます。自由貿易Win-Winの関係なのです。

 

日本では公教育の供給側に競争原理が働いていないのが問題です。文部科学省の定めたカリキュラムに汲々と従い、大学を卒業して教員免許を取得した社会人経験のない教師が子供に教えているのが現状です。そして教員がクビになることは、重大な犯罪でも犯さないかぎりありません。いい先生も、ダメな先生も、年齢や勤続年数で決まる同じ給料をもらいます。大学も文科省が定める細々とした規制に縛られており、どこの大学も似たようなキャンパスを持ち、似たような授業をしています。そして文科省の官僚が大学に天下り、その見返りとして大学側は補助金

 

僕は今の日本の中学・高校生に必要なものは、生きた英語教育とITとファイナンスリテラシーだと思います。しかし文科省トップダウンでこういったカリキュラムを押しつけてもうまくいかないでしょう。競争原理を働かせて、各学校が自律的、自発的に時代に合ったカリキュラムを提供するようにしなければいけません。

 

ある程度以上のお金を得ると、お金にできることというのはまったくもって大したことがないことがわかってきます。毎日フランス料理のフルコースを食べるわけにはいかないし、たとえ食べたとしてもせいぜい一食数万円の世界です。大きすぎる家は不便で、逆に住みにくかったりします。プライベート・ジェットだって、飛行機の中で寝るだけだったら、ビジネスクラスとそんなに変わらないでしょ

 

大金を手に入れただけでは飽き足らない資本主義社会の一部の成功者たちは、自然と社会主義社会の支配者たちが持つ権力に惹かれていくのかもしれませ

 

資本主義社会の中では、成功者は常に新規参入者におびえ続けなければいけません。自分よりもすぐれた者が現れれば、とたんに自分の成功者としての地位が脅かされます。資本主義社会では「現在進行形で」優秀な者しか

 

られないのです。このように考えると、じつは資本主義社会の成功者、そして既得権益者たちこそ、さまざまな規制を作ったりして、自由市場の競争を制限しようというインセンティブが働くことがわかります。