254.ビジネスの世界で戦うのなら ファイナンスから始めなさい。 正田 圭

これに対して 事業家とは、既存の事業に関わり、それを経営し、成長させていく人 を指します。さらには、 将来的に有望な事業を見つけ、それに投資をする ような人も、事業家に含めていいでしょう。  多くの企業の経営幹部たちは、こうしたセンスを持った人を欲しているの

 

様々な意見が出てくると思いますが、私はずばり、「ファイナンス」を熟知し、その知識を駆使して事業を成長させていける力量が事業家としての力 だと考えてい

 

しかし、誤解を招く表現かもしれませんが、年収2~3千万円というのはそこまで高い給料ではありません。日本の非上場企業である中小企業の社長の平均年収は、約2300万円

ウォーレン・バフェット氏が「ロールスロイスに乗る人間が地下鉄に乗って通勤する人

間のアドバイスを聞いている」などと揶揄していたことも

 

ますが、実は「ファイナンス」と「お金儲け」に相関関係はないの

またもやウォーレン・バフェット氏の言葉になりますが、「 事業家で

ゆえにより良い投資を行うことができ、投資家であるがゆえによりよい事業を行うことができる」の

 

わが子に小さいうちから学ばせたいものとして、よくプログラミングや英語などが挙げられますが、私ならどれか一つと言われれば、迷わずファイナンスを選び

 

ただ、 現実の市場は完全に効率的かといったら、決してそんなことはありません。資本市場のマーケットで取引されるような金融商品は、インターネットの普及やIT技術の発達により、かなり効率的な市場になってきているとは思いますが、マーケットに出ていないようなもの(例えば非上場企業の株や特定の金融商品など)は、まだまだ非効率的

 

ベンチャー起業家やベンチャーキャピタルが投資に成功し、莫大な富を手にすることができるのは、非上場株式の市場が完全に効率的とは言い難いから

 

このように、 M&Aというものは、より経営を上手に行うことができる自信のある経営者が、他の経営者から会社を譲り受ける行為 なの

 

敵対的買収などという言葉がありますが、これも言葉のあやです。

 

側の株主が合意しているからこそ、買収が成り立つのです。スクイーズアウト、売渡請求等という言葉もM&Aには出てきますが、それ相応の対価も払わずに、勝手に乗っ取ったり、追剥をしたりするような真似は、法律上不可能です。メディアが自分たちで理解できない金融というものを、さぞ悪者のように書き立ててしまっただけでしょ

 

余談ですが、私が売却側で支援させていただいた経営者の方々は、売却後に引退を考えていても、引退後に気が変わって新たな事業を立ち上げるケースが非常に多いです。  これも、自分の才能を社会で再度具現化していきたいと考える、経営者の性なのかもしれませ

 

リスクの高いことをやろうと思うとエクイティで調達しなければいけなくなり、高い資本コストを払わなければならなくなる。デットだと調達コストは安いが、何かあったときに怖い。この間を取る作業がファイナンスでよく出てくるWACC(Weighted Average Cost of Capital)(加重平均資本コスト)というものです。

 

LBOは、買収先の資産やキャッシュフローを担保(レバレッジ)として借り入れを行い、M&Aを実行していく手法 のことです。

 

年利8%で借り入れをし、企業を買い取って年間 15%の利回りを得ることができれば、自己資金に手を付けることなく、利息を払い、さらには利益を得られ、7%が濡れ手に粟となるのですから、借り手にとってもこれほど魅力的な話はありません。  日本では借金はよくないという考え方が根強いと思いますが、 LBOを好んで行うM&Aプレイヤーは、「借金はバラ色人生への道」「借金万歳」というくらいの感覚を持っていることが少なくありません。

 

ファイナンスの世界では、同じ5億円の儲けであっても、1億円を使って5億円の儲けを出した場合と、100億円を使って5億円の儲けを出した場合の評価は大きく異なります。評価が高いのは当然、1億円で5億円稼いだ場合です。

 

返せる見込みが十分あるのなら、自己資金に手を付けるよりも借り入れに頼ったほうが儲かります。  当然、利息は高いですが、 借入金の利息はすべて経費として計上することができるので、節税効果を期待 することも可能です。

 

このような観点から見ると、「借金はバラ色」なのです。 借金をして、自分がこれだと思ったものにドンと張って、大きく儲ける。  この考えは、ファイナンス的思考では、あながち大それた考えではないのです。

 

これに対して、実際の事業を行っている事業会社側が、ファイナンスの知識を持つようになってきています。  このような環境の変化を経て、 今では投資銀行などを使わずに、事業会社が主体となってM&Aを行うケースも増えてきました。その結果、金融機関以外に勤めるビジネスパーソンであっても、ファイナンスの知識が必要不可欠なものになってきている のです。

 

プライベートエクイティ・ファンドの場合だと、運用によって増額した分の 20%程度を成功報酬として徴収し

 

CVCファンドというものは、前章で紹介したような一般的なファンドとは異なり、 金銭的なリターンではなく本業との事業シナジーをゴールにしてい

 

大企業側には、社内で有効活用されていない資源や技術を社外に提供し、有効活用してもらって ベンチャー企業イノベーションを起こしてもらえる という利点があります。  実際に大きなイノベーションが起きなかったとしても、出資を通してベンチャー企業の技術や、その事業の将来の可能性について学ぶことができる の

 

実際にはマザーズにIPOしても海外の機関投資家に注目してもらうのは難しいため、マザーズにIPOしたらすぐに一部上場を目指していくことが多いですし、上場企業としての真のメリットが活かせるのは一部上場後かもしれませんが、どの市場であれ、上場するということは公開会社(パブリックカンパニー)としての道のりを歩み始めるということなの

 

どんなものでも、 適正価格をピンポイントで設定するということは、そもそも不可能 なのです。常に割安だったり割高だったりするのと同時に、状況によって適正価格自体も動いていくことでしょ

 

常に実態と期待値がお互いに追いかけっこしているようなものなので、一所に留まっていることはありません。逆に言えば、このように 不確実性が高いからこそ、ファイナンスの世界にはチャンスが潜んでおり、儲けるポイントもちりばめられている の

 

不確定な状況でいかにリスクを抑え、高いリターンを出すか。それがファイナンスを仕事で使うビジネスパーソンに期待されている結果 なのだと言えるでしょう。

 

経済はジグザグしながら上がっていくものであり、バブルがはじけても驚くようなことではありません。資本主義というシステム自体がそういうものなの

 

再三述べているように、 経済状況がアップダウンすることは、チャンスが増えるということでもあり、とてもいいこと なの

 

ファイナンスを勉強し、幅広い視点を身につけていくことが重要 であり、その思考はみなさんが携わっているビジネスを支えることや、ビジネスを大きく飛躍させることにつながっていくでしょ