210.参謀 森繁和

この2年間、評論家として、キャンプもペナントレース中も一番中日を気にかけて見ていたのだが、一番のドラゴンズ 凋落 の原因は選手にやる気がなくなったからである。指導者からいえば選手にやる気を起こさせることができなかったから。それに尽きるといっても

 

たとえば、私は選手に対してすぐにカッとなりやすかったのだが、いつの間にか、監督のように、若手をじっと見守り黙って成長を待つ指導法を身

 

つけた気がする。ドラゴンズがしぶとくて強いチームになったのは、落合監督の「見守る力」が、コーチ陣にも浸透したからではないか。その結果、選手たちは自然に自分たちで判断して、最善を尽くすことができるようになったので

 

こんなコミュニケーションが我々と監督の間に大きな絆を作ったし、強いチームの野球を勉強する機会にもなっていた。体力的につらかったことはつらかったが、我慢して飲んだというより、本当にお酒が好きだったし野球の話が好きな連中だった。それで、信頼関係ができたのかもわからない。  結局、朝までコースのメンバーを中心に8年間続いたのだから。

 

常識にとらわれるより、バッター心理から見て、いやな投手交代をしたほうがよい。これは落合監督に言われてすごく勉強になっている。  おかげで、相手の気持ちがどうなのか、一度考えて、決断するクセがついた。グラウンドで言えば、相手の嫌がることを、どんどんやる。これは粘り強く勝つための、基本中の基本だと

 

記憶に新しいところでは、2011年シーズン終盤、毎日のようにコメントが「選手はよく動けている」だけだったりした。  優勝が目前に迫って、選手たちが緊張で動けていないときにも、そう言っていた。緊張して足が動かなくなっている選手がこのコメントを読んだら、多少は気分が楽になるだろう。また、相手にこちらが緊張しているなと心理的に優位になる情報を与えることも

 

さて、潰れない選手、伸びる選手には、共通点がある。  特に投手の場合、この共通点は、大成するために絶対必要不可欠な条件だと感じる。  それは、孤独な時間をきちんと過ごせること

 

孤独な時間を作るのが重要なのは、それが自分を見つめ直す時間になるからだ。そして自分を見つめ直すことは、すなわち一人で野球を考えることになるの

 

プロのマウンドというのは想像以上に孤独な場所である。孤独と友達になり、孤独に勝たないとプロでは勝者になれない。  相手を知る前に、孤独に慣れ、技術的にも精神的にも、自分をしっかりわかっておかないといけないのだ。そのためには孤独な時間をうまく

 

ぽつんとした人生はイヤだが、一人で何もせずに考えているのは大好きである。私は釣りが大好きだが、とても私の性に

 

オフや試合後、一人でゲームやパチンコをやっている投手は、なかなか一人前にならない。それだったら、まだ麻雀で勝負の駆け引きを学び、相手の心理を読む訓練をしてくれたほうがよい。  若い選手たちには、たまにこういう話もするのだが、「何をどうやって考えればいいんですか?」などと聞かれることがある。一人で考える習慣ができていないのである。私はそんなときこう

 

落合監督が成功した理由に、すべて自分でやるのではなく、任せることの重要さを理解していたことはとても大きかったと思う。  投手交代や若手投手の育成などを任されたことは散々書いたが、それまでのチームのコーチ時代と比べて、同じ投手コーチだった中日の最初の2年ですら、与えられるものが相当多かったので

 

プロ野球も人気商売だから、ファンが重要。客の呼べる人気選手を厚遇する必要があるし、ファンが喜ぶイベントには積極的に協力する。また、あまり優勝を続けると監督・選手の人件費がかさむから、そこそこでいいという経営上の判断が優先されることも、実際、チームによっては

 

根本さんも落合監督も、全然違うタイプではあるものの、若い選手からすれば黙って座っているだけで怖いイメージだろうが、何よりも選手への愛情を持った、人情家だと思う。裏でカバーをする優しさがなんともすばらしく、選手もどんなつらいことでも、自然についていこうとする意識が働いたのではない

 

 これだけの経験があっても監督としては結果が出ない。

やはり落合氏あっての森氏ということなんだろうか。適材適所というか。

落合氏は身近な人からの評価が例外なく高い。