197.人生の勝算 前田裕二

テレビがつまらないとよく言われますが、テレビ番組は、高級レストランほどの圧倒的な完成度を持たないにもかかわらず、スナックのような身近さもない。人々が、リアリティと共感に溢れるスナックのようなコンテンツを求め始めている中で、中途半端に編集されたコンテンツを作っても、人が感情移入しないことは自明


結局、入社したのは、UBSという外資系の投資銀行でした。  インターンをしていて、まず何よりも、仕事の内容が自分に向いているなと思いました。株を扱う仕事には、とても惹かれました。  株は、社会を、心を、森羅万象を、反映しています。株取引を通じて、この世界の本質に触れてみたい。そう思いまし


宇田川さんは人に好かれる天才ですが、それ以前に、「人を好きになる天才」でした。他人と接して、その人のいいところや、感謝できるポイントを自然に見つけて、まず自分から本当に好きになって


好きになられたら誰だって、悪い気はしません。人間関係は鏡であり、人は好意を受けたら好意を返そうとする生き物


ビジネスの相手はもちろん、その秘書やアシスタント、ショップの店員や、タクシー運転手にも宇田川さんは最大の好意を持って接します。すると宇田川さんに好意的な人が、今度は逆にどんどん集まって


宇田川さんと出会って以来、僕はとにかく、無条件で相手を好きになることを心がけています。プライベートでもビジネスでも関係なく、全力の愛情を持って接したいと思い


もちろん、たくさんの人に会うので、正直相性が良くないとか、苦手なタイプの人もいました。証券会社時代に、そういった人に電話するときは、相手の名前を「好きだ! 好きだ!」と心の中で100回ぐらい唱えてから、電話します。ある種の自己暗示のようなものだったのかもしれませ


よくビジネス書では、人に好かれる能力を磨きなさいと説かれていますが、僕は逆だと思っています。人を好きになる能力の方が、よっぽど大事


人を好きになることは、コントローラブル。自分次第で、どうにでもなります。でも人に好かれるのは、自分の意思では本当にどうにもなりません。コントローラブルなことに手間をかけるのは、再現性の観点でも、ビジネスにおいて当然でしょ


宇田川さんの言っていることは、実は特別ではないことがほとんどです。会社に来たら皆に挨拶する。誰より早く来て勉強する。人には思いやりを持って接する。証券マンなら日経新聞は毎日隅々まで読む。小学生でもわかりそうなことです。  この当たり前のことを、圧倒的なエネルギーを注いで誰よりもやり切る。それがビジネスで成功するために必要なことだと、宇田川さんの背中から教わりまし


しかし、実はどの分野でも、基本中の基本をやり続けている人は、意外と多くない。何か特別なことをする必要はなく、当たり前を徹底的にやり続けるだけで、他の人とは圧倒的な差がつくんだと、このときに知りまし


ニューヨークでも、僕はトップの営業成績を取りました。  何しろ、日本にいた頃とスタンスは変わらず、めちゃくちゃ働きます。  アメリカ人はどんなに優秀でも、家族との時間やプライベートを大事にします。就業時間以外は働きません。僕はニューヨークでも、早朝出社の日課を続けていまし


そう思って、自分は、自己分析ノートを 30 冊以上書きました。積み上げたら 30 cm ぐらいあったと思います。それでも、自分の人生をすべて書き出すには、十分ではなかったと思います。自分に関して、具体的なことも抽象的なことも、何を聞かれても即答できると自信を持てるまで、あらゆる方向から自分というものを洗い直し、とにかく自己分析をやり尽くしました。就活生が 50 万人いるとしたら、トップ1%の5000人には入るくらいの勢いで自己内省を深めてやる、と。  また、余談ですが、集団面接の練習も、たくさんしました。そこで


れたら、自分の良さが相手にまったく伝わらないまま、チャンスを逃してしまうと思ったからです。   24 時間営業でやっているファミレスに夕方から朝までこもって、コンサル会社の先輩などを呼んで面接官役を担ってもらう。そして、友だちと何度もグループディスカッションの練習を繰り返しました。この練習によって、集団面接は負けなしになり、必ず1対1で面接官の方とお話しするところまでは行けるようになりました。すべては、面接で合格する精度を高めるための逆算でした。


人の心は弱く、どれだけ他人が羨むような状況にあったとしても、得てして、隣の芝生が青く見えてしまうもの


僕が仕事にすべてを捧げられるのは、色々な生き方の選択肢がある中で、「仕事に狂う」と決めた


スティーブ・ジョブズも、毎朝、鏡に映る自分に問うていたといいます。「お前が今日やろうとしていることは、今日が最後の日だとしても、やるべきことなのか?」と。  死という、究極の終わりからすべてを考えていきたい。人によって本当に多種多様な幸せのかたちがあり得ますが、僕にとっては、立ち止まって休憩することで得られる幸せはない。いつでも夢に向かって、全速力で走っていたいの