165.99%の社長が知らない銀行とお金の話 小山昇

銀行営業マンは、新規融資や融資増加額で評価されます。ですから、彼らも、本当は貸したい。貸さなければ、自分の評価が上がらないからです。

 

銀行マンがノルマに追われやすいのは、「3月、4月、9月、10月」です。

銀行はこの時期になると、「ノルマを達成したい。どこかに貸せる会社はないか」と、貸す気が高まります。

 

貸したい気持ちはどの銀行も同じですから、競争原理が働く。ということは、「他行に取られる前に貸したい」と考えるはずです。  私はそのことがわかっているので、この時期が近づいてくると、「貸出は足りていますか?」「預金はいくら足りないのですか?」と声をかけ(取引のある銀行に平等にお声がけします)、足りていない場合は、できるだけ借りるようにしています。それが銀行を応援することにつながるからです。

 

借入れした分を返済すれば、自己資本比率は高くなります。そのかわり、現金を持たないから体質が弱くなる。だから私は、自己資本比率が低くなっても、借金を完済することはありません(借金の総額と同等以上の現金・普通預金保有しているので、武蔵野は実質無借金経営です)。  

 

多くの会社が、1.2%〜1.5%の金利で借りている時代に、わが社は、2.7%の金利でお金を借りていました。倍近い金利です。  ですがその年度、武蔵野は会社がはじまって以来の増収増益になりました。反対に、「金利がもったいない」と言って融資を受けなかった会社の多くが、業績を落としました。  高い金利で借りて業績を伸ばす社長と、安い金利で借りて(または借入れをしないで)業績を落とす社長では、どちらが優秀な社長ですか?  前者に決まっています。  

 

経営にとって大切なのは、規模の拡大です。  規模の拡大とは、すなわち、お客様の数を増やすことです。金利は高くてもいいからたくさん借りる。借りたお金はお客様を増やすため、あるいは、ライバルとの差をつけるために投入するのが正しい。  お金を借り、規模を拡大して、お客様に喜ばれて、結果として売上が上がって、利益が出る。このサイクルを繰り返していくこと以外に、会社は成長しません。金利は、会社を成長させるための必要経費と考えるべきです。

 

金利が高くても、返済期間は長く」が借入れの基本方針です。ですが多くの社長は「金利は安く、返済期間は短く」しているから、資金繰りが苦しくなります。 「借金は悪」「金利はもったいない」「銀行は敵」と考えている社長は、借入れをすると「繰り上げ返済をしたい」「リスケ(リスケジュール)をしたい」と考えます。  ですが、資金に余裕があっても、繰り上げ返済をしてはいけません。なぜなら、繰り上げ返済をすると銀行が損をするからです。

 

証書のコピーを取ったほうがいい「3つ」の理由  支払いが終わったあと、銀行は借入証書を返してくれるでしょうか。黙っていると、返してもらえません。なぜなら、ライバル銀行にお客様を取られないようにするためです。  ですから、お客様から「証書を返してほしい」と言われるまで銀行は返しません。  私もかつて、ある都銀に「証書を返してください」と請求したことがありますが、返していただいたのは、半年後でした。  私は経理の担当者に「融資を受けるときは、証書のコピーを取りなさい」と指示します。

 

コピーを取る理由は、次の「3つ」です。 理由①……コピーを取っておかないと、どのような内容でサインをしたのか、わからなくなるため 理由②……コピーを取る会社は、「この会社はしっかりしている」と銀行からの評価が上がるため(コピーを取らない会社は「ずさんな会社」と思われ、金利が高くなることもある) 理由③……万が一、銀行と裁判を起こすような事態になったときの証拠とするため  自動車を買うと、証書の控えをもらいます。けれど銀行からお金を借りても、証書の控えをもらいません。これは、おかしい。自社の評価を上げるためにも、証書のコピーは取っておくべきです。

 

ポイント② 売上が5億円以下なら、「信金」がないとダメ ……信金金利が高いのですが、都銀に比べると途中でハシゴを外すことはありません。地域経済の発展を支えるという命題がある以上、そう簡単に見捨てたりはしません。金利が高くても、私は「会社を守るための必要経費」だと考え、信金を頼りにしています。

 

ポイント⑤ 政府系金融機関は自社のチェック機関にふさわしい ……商工中金や日本政策金融公庫といった政府系金融機関は、審査が厳しい分、政府系金融機関から融資を受けることができれば、その会社は「見込みがある」と判断されたと同じです。  銀行は横並びなので、政府系金融機関から借入れできれば、地銀や信金からの融資が受けやすくなります。

 

都市銀行1、地方銀行1、信用金庫1、政府系金融機関1」を基本に、自社の規模や地域における金融機関の数に応じて、都銀を増やしたり、地銀を増やしたり、信金を増やしていけばいい。武蔵野は、現在、「9行」と取引があります。  なお、自社がその銀行から、どのように評価されているかは、新しい支店長が着任したときにわかります。着任の挨拶に来られたとき、「前任者と挨拶に来たか」(Sランク)「ひとりで来たか」(Aランク)「手紙だけで挨拶を済ませたか」(Bランク)です。

 

経理の仕事をしたのは、わずか1年3カ月でしたが、お金が命の次に大切なものであることを何度も実感しました。  こんな私でも、経営サポートパートナー会員の方から、相談を受けることがあります。 「今月は資金繰りが厳しいのだけど、高梨さんはどう思いますか?」  私は小山と違って、アドバイスできる立場にはありませんが、唯一言えることがあるとすれば、 「経営者は、残高がいくらあるのかを毎日確認しておいたほうがいい」  ということです。  社長がお金の心配をしていたら、事業に専念できません。そうならないためにも、お金について、B/Sについて、銀行交渉について勉強する必要があると思います。

 

財務体制を充実して、現金と普通預金の合計で長期借入金を上回り、実質無借金経営にする。  武蔵野は、約15億円の借入金に対し、約15億円の現預金(現金+普通預金)を持ち、かつ定期預金が3億円あるので、実質無借金経営です。  このような状態になると、多くの社長は、「現預金のほうが多いのだから、借入れを全額返済しよう」とします。借金が多いと心理的な重圧がかかるからです。  ですが、無借金の会社になると、銀行は、いざというときにお金を貸してくれません。無借金経営ではなく、「実質無借金」が理想です。

 

水と空気と安全は、昔はタダだった。ですが今は違います。世の中は変わりました。お金を払ってミネラルウォーターを買い、お金を払って空気清浄機を買い、お金を払ってホームセキュリティーを導入しています。安全は、お金を払って買う時代です。  銀行からの融資も、考え方は似ている。金利を払って銀行からお金を借りることは、安全を買うことです。

 

中小企業の社長の多くは、自社の数字がわかっていません。だからこそ、経営計画書をつくる社長は信用されるのです。  武蔵野では、経営サポートパートナー会員を対象に「経営計画書作成合宿」を開催しています。この合宿では、自社の具体的なB/Sの数字を使って、経営計画を作成していただきます(わが社がつくった自動計算ソフトを使用)。  対前年で115%伸びた場合に「どれだけ利益が出て、お金が足りなくなるか(余るか)」「緊急支払い能力はあるか」「いくら返済できるか」「減価償却費はいくらになるか」「どれだけ設備投資できるか」「格付けはいくつになるか」といった「会社の数字」を計算し、 ・「長期事業構想書」(5年先までの事業計画) ・「長期財務格付け」(安全性、収益性、成長性、返済能力から見た格付け判定) ・「長期財務分析表」(経営効率、資金繰り、運転資金の回転率など) ・「経営目標」(今期の売上高、粗利益、経常利益、経費、人件費など) ・「月別利益計画」(各月の売上高、粗利益、売上原価などの「目標」と「実績」) ・「支払金利年計表」(1年間でいくら金利を払っているか)

を明らかにします。この数字を明記した経営計画書を銀行にも渡しておけば、融資の際、あらためて資料を提出する必要がありません。

 

「この事業を撤退するから、3000万円貸してください。撤退すれば、これから毎月470万円ずつ利益が出ます。利益が出るから貸してください」  事業を撤退すれば、経費削減になる。経費削減は、利益に直結する。利益が出れば銀行も回収できる。だから撤退資金を貸してくれたわけです。  赤字でも「どういうふうに黒字にしていくのか」をきちんと示せれば、銀行はお金を貸してくれます。  銀行は、良いことばかり言う社長を信用しません。銀行が信用するのは良いことも悪いことも正直に、それもできるだけ早く報告してくれる社長です

 

人間は、最初に聞いたことよりも、最後に聞いたことのほうが印象に残ります。だから、「悪いことから先に報告する」のがコツです。  

 

武蔵野のキャッシュは11億円。「そんなにあるのにまだ借りるのか」と思われるかもしれないが、何があっても困らないために、緊急支払い能力を

らに高めたい。さらに1億円は必要だと考えている。緊急支払い能力は、一般的には「月商の1カ月分」と言われているが、武蔵野の安全指標は「月商の3カ月分」

 

現在は、お客様が「Google」と「Yahoo!」に直接支払いをし、「ミスターフュージョン」は手数料だけをもらっています。売上は減るけれど、手数料収入のビジネスに変えたことで立て替えがなくなり、安定的に現金が残るようになりました

 

金利が高いといっても、中小企業の場合はせいぜい数百万単位です。ですが、数百万円の金利を払って資金を調達し、未来のために投資をすれば、数千万単位の利益が出る。ゼロが1桁違います。このほうが断然得です。  金利を多く払うことになっても、複数の銀行とつき合う。そして余裕を持って事業をする。結果的には「銀行に金利を払ったほうが、早く利益が出る」ことになります

 

P/Lの数字、つまり会社の利益は、社長と社員が協力しないと上がりません。一方で、B/Sの数字は、社長ひとりでつくることができます。それ

なのに、多くの社長がP/Lの数字しか見ない。B/Sの数字を見て経営をしている社長は、私の経験から言うと、「1万人にひとり」くらいしかいません

 

3 厳しい経営 銀行から融資を引き出すマジックフレーズ。自分に厳しくするには、やらないことを決めること。やりたいこと・やることばかり決めていると、人間は甘くなる

 

月初・月末・五十日・午後 月初・月末・五十日・午後3時は銀行も忙しいので、この時期(日時)の銀行訪問

避ける。忙しい時間に訪問しても、相手にしてもらえない