160.東大から刑務所へ 堀江貴文、井川意高

有名でも無名でもない中間くらいの立ち位置で平和に生きていきたいと思った。

 

でも、ドンチャン騒ぎなんて、所詮は一瞬の快楽でしかない。酔っぱらったら記憶が飛ぶことだってありますしね。きれい事に聞こえるかもしれない


けど、僕にとってはあのころも仕事こそが最大の娯楽だったんですよ。 井川 たかぽんは派手に遊んでいるように見えてたけど、こんなに仕事に真面目な人はいないよね

うん。「有名税」なんて冗談じゃないよ。有名になりすぎると人生ろくなことがない。願わくば、有名でも無名でもない中間くらいの立ち位置で、平和に生きていきたいものですな

「出る杭は打たれる」と言うとおり、目立ちすぎるとろくなことがない。人間の嫉妬ほど怖いものはありませんな。

堀江 本当ですよ。若いヤツが一代で成り上がってイノベーションを起こすのを、旧世代の連中はよしとしない。成り上がりを嫌い、成り上がりを寄ってたかってつぶす。こういう日本の風潮はつくづくくだらないと思う

検察はそれくらいのことは平気でやるでしょうな。

堀江 みんな「刑務所に入るなんてオレにはありえない。所詮は他人事だ」と思ってるだろうけど、全然そんなことない。検察からにらまれたら、どんな小さなホコリでも探し出されて罪人にさせられてしまう。逮捕されるかどうか、刑務所に入れられるかどうかなんて、実際は紙一重だと思う

私もそう思う。残念ながら、日本はそういうヤバい国なんだよね

裁判官って、自分より年収やステイタスが上の人間を認めたくないんだと思いますよ。「東大法学部を出て司法試験に受かって、裁判官にまでなったオレたち最高のエリートは、年収3000万円をもらってる。これが日本最高のステイタスだ。これ以上カネをもらってるヤツらは、悪いことをして稼いでるに違いない。世の中のルールに従っているフリをしながら、どこかでズルをしてるんだろう」くらいに考えてるんでしょうね

井川 裁判官の倫理観ってものすごく時代遅れなんだよ。村上ファンド村上世彰さんの判決にだって「利益を最優先するとはもってのほか」みたいなことが書いてあったでしょ。いやいや、ファンドの使命は顧客の利益を最大限にすることであって、それが職業倫理なんだよ。ところが裁判官は儒教の精神を未だに引きずっていて、古い小学校の道徳の教科書みたいな頭なんだ。カネに触るなんて、基本的に汚いことだと彼らは思ってる

堀江 まったく、この世間とのズレはどうしようもないですよね。裁判所と自宅を往復する生活をするんじゃなくて、たまには居酒屋にでも出かけて、そこらへんのオッサンとしゃべりながら世間とのズレを直してほしいもんだ

井川 運動後の麦茶がウマいという気持ちは私にもわかる。だけど悲しいかな、シャバに出てきたらそういう感覚はすぐに消えちゃうんだよね。刑務所という特殊な環境だからこそ、味覚や感覚が普通じゃなくなるのかもしれない。 堀江 「麦茶がウマすぎる」とかいう感覚って、シャバに出てきた瞬間、あっという間に普通に消えますよね

堀江 「1カ月=30日=720時間」と勘定しちゃうとゾッとするけど、日めくりカレンダーみたいにポンポン1日が過ぎていくイメージだと、そんなに気にならないんですよね。人間、ヤバい環境にいてもけっこう慣れるものです。というか、慣れて麻痺でもしてなきゃやってられない

シャバの悩みの9割は「仕事」と「女」 井川 佐藤尊徳さんが喜連川刑務所まで面会に来てくれたとき、私はこんな本音を口にしたことがあった。「尊徳さん、やっぱりシャバの悩みの90%は仕事と女だね。こっちには仕事の悩みも女の悩みもない。だから本当にストレスフリーだよ」。男の悩みなんて、実際のところそんなものだよね。

アル・パチーノが出ていた「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」とう映画があるでしょ。私はあの映画が好きなのよ。盲目の退役軍人であるアル・パチーノが言うセリフの中に、こんなのがあるのよ。「オレの人生の中で一番大事なのは女、そして、かなり離れてフェラーリだ」。そんなもんですよ、やっぱり。男ってみんなそうじゃないかな

ヤクザから作家に転身した安部譲二みたいな人もいますしね。10年以上前のことなんて、みんなにとっては終わったこと、なかったことなんです。だったら、そんな過去は逆手にとって新しいことを始めちゃったほうがいい。  釈放から10年もたてば、テレビは「ホリエモン=元犯罪者」だということすらまったく言わなくなるんじゃないですか。だって、僕が仮釈放されてからたった4年しかたっていないのに、NHKが「初の民間宇宙ロケット 打ち上げへ」なんてテレビ中継して、僕のインタビューまで流してくれるんですから