154.税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか? 大村大次郎

税金の勉強のために読書。

ようするに献金は、すべて政治団体の収入になるのだ。そして政治団体に対しては、その収入(献金)には税金が課せられない。つまり、政治献金をいくらもらっても、無税になっているのだ。  政治団体が受け取った金は実質的には政治家が自由に使える。  つまり実質的には政治家の収入なのだが、政治団体というパイプを通すことで政治家への課税はされないのである。  民主党(当時)の小沢一郎氏は、ゼネコンから数億円の献金を受け取り、それを土地購入資金に充てたことが問題になったことがあるが、この献金も政治団体の収入なので、小沢氏の所得に関してはすべて非課税になっているわけである。  


オーナー社長の収入の3分の2は、持ち株の配当によるものだ。だから、オーナー社長の収入の大半は、この優遇税制の恩恵を受けている。この配当収入に対して、所得税、住民税はわずか10%で済んでいるのだ。  この優遇措置は現在は終了しているが、それでも配当所得の税金は、所得税、住民税合わせて20%である。これは平均的サラリーマンの税率と変わらないのだ(詳しくは後述)。  


そしてもう1つの要因が社会保険料の〝掛け金上限制度〟である。  現在の社会保険料は、事業者負担、本人負担合計で約30%となっている。  しかし、社会保険料の掛け金には上限があり、だいたい年収1000万円程度の人が最高額となる。それ以上収入がある人は、いくら多くてもそれ以上払う必要はないのだ。  だから年収1000万円を超えれば、収入が増えれば増えるほど社会保険料の負担率は下がってくる。  おおまかに言って年収1億円の人の社会保険料率は、普通の人の10分の1となり、年収3億円の人は30分の1となる。そのため、オーナー社長氏の社会保険料負担率はわずか0・4%となっているのだ。  


社会の恩恵をもっとも受けているのは富裕層なのである。彼らは、日本の社会が安定し、順調に経済運営が行われているからこそ富裕層になれたのである。  だから社会保障に対して、相応の負担をしなければならないのは当たり前のことである。年金問題の解決には、まずは富裕層の社会保険料の負担を引き上げるべきである。ほとんどの国民は、それに異論がないはずだ


つまり、10億円の資産をもらっても、この遺族は合計で1億7100万円しか相続税は払わずに済むのだ。わずか17・1%である。  しかも、これは遺産を全部、現金や預貯金などでもらった場合の話である。遺産が不動産などだった場合は、さらに安くなる。居住していた家を遺産として受け取った場合、だいたい評価額は6分の1に軽減される。  


そもそも富裕層の資産というのは、日本の国から取得したわけであり、日本という国の治安が良く、産業力もあったからえることができた資産である。  その人の努力だけで獲得したものではないのだ。  だから、一定の資産を死んだときに国に返すのは、国民として当たり前のことである。そうしないと貧富の差が次世代に引き継がれることになる。  


開業医は税金に関して非常に優遇されている。  社会保険診療報酬の72%を経費として認められているのだ(社会保険診療報酬が2500万円以下の場合)。  簡単に言えば、「開業医は収入のうちの28%だけに課税をしましょう、72%の収入には税金はかけませんよ」ということである。  本来、事業者というのは(開業医も事業者に含まれる)、事業でえた収入から経費を差し引きその残額に課税される。  しかし開業医は、収入から無条件で72%の経費を差し引くことができるのだ。実際の経費がいくらであろうと、である。  開業医の税制優遇制度は以下の表の通りである


じつは、株の配当、売買による収入について、所得税はわずか15%(復興特別税含む)しかかからないのである。  何億、何十億の配当をもらっていても、たったのそれだけである  所得税率15%というと、平均的なサラリーマンの税率と変わらない。  上場企業の株を3%以上保有する大口株主の場合は20・42%となるが、上場企業の株を3%以上もっているのは相当な資産家である。その大資産家にしても、わずか20%程度の税金で済むのだ。  また株の配当、売買による収入については、住民税は5%しかかからない。上場企業の株を3%以上保有する大口株主の場合は、普通の人と同じように10%となるが、それ以外の株主、投資家は5%で済むのだ。  住民税は、通常は一律10%かかるものである。サラリーマン1年生でも10%の住民税を払っているのだ。  


にもかかわらず投資家だけが半額の5%で済んでいるのか、まったく謎である。  先進国でもっとも投資家の税金が安い  日本が格差社会になったのも、この投資家優遇が大きな要因だといえる。  考えてみてほしい。  毎日、汗して働いているサラリーマンの平均税率が15%程度なのである。  その一方で、株をもっているだけで何千万円、何億円も収入がある人の税金も同じく15%なのである。  


これで格差社会ができないはずはないのだ。  こんな投資家優遇の国は、先進国では日本だけである。  イギリス、アメリカ、フランス、ドイツなどを見ても、配当所得は金額によって税率が上がる仕組みになっており、日本の数倍の高さであ


アメリカは、現在のところ時限的な優遇措置をとっているので、最高14%となっているが、本来は50%の税率が課せられている。またアメリカでは、住民税は資産に応じて課されるため、必然的に大口投資家のような資産家は多額の税金を払わなければならない。日本のように5%で済むということはないの


というより、投資組合自体にはまったく税金がかからないのだ。  なぜなら投資組合は会社ではなく「組合」だからだ。  民法上の組合は、いくら収益をあげても税金はかかってこない。収益は組合員に還元されて、税金は組合員が払うという建前なので、投資組合自体は税金を払わなくていい


そうなると、どういうことが起きるかというと、投資組合は投資で儲かればそのお金をそのまま再投資に使うことができるのだ。  これが普通の投資会社ならばこうはいかない。  企業が投資を行ったり他企業の買収を仕掛けて利益をえた場合、その利益には多額の法人税がかかる。だから再投資をしようとするなら、利益を差し


引いた残りの資金でするしかない。  だから投資会社をつくるより、投資組合をつくったほうが絶対に有利なのだ


これは、住宅地の税金が高くなってしまうと、庶民の生活費を圧迫するからである。この規定は妥当なものだといえる。  しかし、この6分の1の規定が巨大マンションを棟ごともっている人などにも適用されているのである。つまり、この割引特例制度がなぜか巨大なマンションを何棟ももっているような大地主にも適用されているのだ。  なので、猫の額ほどの住宅をもっている人と大地主が同じ税率になっているのである


はたして、子供たちは学校で1日、5000円以上の価値のある教育サービスを受けているだろうか。  いまだに冷暖房の完備されていない教室で、30~40人に1人しかつかない教師。何十年もほとんど内容が変わらないおもしろみのない教科書。今の学校の授業なら、どう高く見積もっても、1日1000円が限度だろう。無料だから皆行ってるものの、これが毎日5000円を自腹で払えと言われ


もし民間の学習塾などに、1日5000円の授業料を払えば、いたれり尽くせりの非常に高度な教育サービスを受けられるはずだ。  利便性の高い場所で、冷暖房は当然完備されるだろうし、教師も10人に1人くらいはつくはずだ。  たとえば大手の予備校の全日制で年間の受講料はだいたい60万円程度である。小学校が使っている税金の半分ちょっとである。  しかも予備校の場合、駅前の1等地にあるケースが多く、高い場所代、高い法人税、固定資産税なども払っている。講師なども高給で優秀な人を集めている。にもかかわらず、公立小中学校よりもはるかに低い金額で運営されいるのだ。  


教育というのは、「どれだけ子供に手をかけるか」で全然違ってくるはずだ。どんな教育理念よりも、教師がなるべく多くの時間と手間を1人ひとりの子供にかけてやる、それが子供の教育の基本だろう。  子供のお金をピンハネするような奴らが考える「教育


なぜなら、法人税が減税されれば、会社は経費率を下げる努力をするからである。  法人税は企業の利益に対してかかってくるものだ。  企業の利益はサラリーマンのものではなく株主のものである。だから法人税が下がって、その分の利益が増えれば、それは株主に回されるのだ。  またもし法人税が減税されれば、会社は株主のためになるべく多くの利益を残そうとする


また社会保険料を下げれば、社員の手取り額が増えるので、それだけで実質賃上げとなるのだ。  とくに、低所得者社会保険料を下げれば中小企業が新規雇用をしやすくなり、雇用増につながりやすい。年収300万円以下などの低所得者を対象にすれば、財源もそれほどたいしたことはない


どうせ〝減税〟をするならば、賃上げや雇用増に直接つながることをすべきだろう


実際に、日本で法人税が最高に高かった時期は、日本経済がいちばん元気があった時期なのである。法人税がもっとも史上、高かったのは、1984年から1987年の43・3%である。日本経済がこの時期に最高潮を迎えていたことは、だれもが知るところである。また企業の株価もこの時期は非常に高かった。  だから法人税増税したところで、景気が減退したり、株価が暴落したりすることはありえないのだ。  何度もいうが、法人税増税することは、国内外の投資家の取り分が減るだけのことなのである


国は今までなんのために法人税を下げてきたのか?  それは法人税を下げれば、だれが得をするのかということを考えれば、すぐにわかる。  法人税は企業の「利益」に対してかかってくる税金である。法人税が減税されるということは、会社に利益がよりたくさん残るということである。  では、企業に残った利益を手にする人とはだれか?  それは株主である。  会社の利益は、原則として法人税を差し引いた残りは株主のものになる。  つまり法人税を減税して、もっとも得をするのは株主なのである。つまり国は投資家のご機嫌を取るために法人税を下げていたのだ。  ここでも、「株主優遇政策」が行われていたわけであ


これで格差社会にならないほうがおかしい。それくらい徹底した株主優遇政策なのである。  株主を優遇することは、日本の利益を外国人に寄贈することでもある。日本企業の株主の4分の1は外国人であり、彼らが配当の実質半分をもっていっていると見られる。  企業の利益は、その企業だけのものではない。日本人が真面目に働き、日本社会が安定的に機能してきたその結果えられたものだ。いわば日本経済の果実といえるだろう。「法人税を減税する」ことは、その果実を資産家と外国人投資家に渡すことになるのだ。  その点を重々承知しておいていただきたい


現在、日本企業の配当金は15兆円~20兆円で推移している。ということは、その半分である7兆円~10兆円を毎年、外国人投資家にもっていかれているのである。つまり、日本企業は毎年7兆円以上を外国に寄贈しているわけである。  7兆円というのは、けっこう大きい金額である。  現在、日本の企業が国に納めている税金(法人税)の総額が10兆円前後である。ということは、日本の企業は10兆円を国に納め、7兆円を外国に納めているわけである。  筆者は別に外国人排斥主義者ではない。  国が豊かになるためには、外国と上手に付き合っていくことであり、さまざまな形での経済交流は絶対に必要だと思っている。また資本主義社会である以上、企業が配当金を払うのは当然のことである


しかし、だからといって、社員の給料さえまともに払っていないのに配当金を増大させることは、国家にとって損失になるということである。日本の国民が額に汗し、サービス残業をし、有給休暇もとらずに働いたその結晶が、いたずらに外国に流出しているのである。これほどバカバカしいことはない。  日本企業はまず何より社員に対して十分な対価を払うべきである。また日本国内でしっかり金を使うべきである。配当はその残りでいいのだ。これは大局的に見れば、国の利益にもつながるのである