297.仕事が麻雀で麻雀が仕事 藤田晋

株主にとっても同じです。短期、長期、積極派、消極派……色んな立場の人がなんとでも言える投資の世界で、大事なお金を任せるなら、理論的に正しいことを雄弁に語るような社長よりも、勝負強い社長がいる会社に投資すべきです。 20 年前にソフトバンク孫正義社長の勝負強さに気付いてそれに賭ける勇気があったなら、今頃は大変な資産を築いているはずです。サイバーエージェントの株主もまた、私の勝負強さに賭けて株を保有してくれている株主が多い気がし

 

さして良い配牌でもなく、当たり牌も摑まされ、我慢の麻雀を強いられる、麻雀というゲームはそのほうが普通ではないでしょうか。戦う前に絶好調の自分を想像するということは、その稀なケースのほうに自分のメンタル的な照準を置いているようなものです。すると何が起きるかというと、毎回のように配牌が酷く見えて嘆いたり、自分の状態を過信して無謀な勝負に出てしまったりするのです。麻雀は4人でやるゲームなので、単純に4分の3はアガれなくて普通の状態です。しかし絶好調の自分に照準を置いている人は、その

の時間帯がひどく劣勢に立たされているように感じます。そこに焦りや不安が生じて自滅してしまうの

 

これは金持ちになって不幸に陥るパターンに似ています。裕福になり、周囲からちやほやされると、その特別な状態は自分の実力だと勘違いします。するとそこには喜びを感じられず、逆に安物に嘆いたり、扱いが悪い店員に腹を立てたりして、自ら不幸になるのです。仕事においても、社内外で注目されるような大活躍をする時期があります。冷静に振り返ってみれば、それは長い仕事人生のほんの一時期なのですが、誰しもそれが本来の自分の実力だと思いたいものです。しかし麻雀同様、絶好調の自分に照準を置けば、それ以外の普通の日々が劣勢に立たされたように感じます。すると麻雀同様、不安や焦りから自滅しやすくなり

 

逆に、絶不調を想像するのもよくありません。麻雀には、配られる配牌は最悪で、毎回のように当たり牌を摑まされる、そんな日も確かにあります。でも、それもまた稀なケースなのです。  大事な麻雀の対戦の前は、楽観せず、悲観もせず、気持ちをニュートラルな状態に戻して試合に

 

それが一番大事だと私は思い

 

いずれにしても相手のレベルが自分より上、あるいは高レベルにあるときは「 晒すと負け」やすい。これは万事に共通していることだと思い

 

長期に亘って活躍する経営者に多く見られる共通点の一つは「食えない奴」だと思います。お世辞を言われても簡単には乗せられず、脅かされてもビビらないようなタイプです。 「麻雀が強そうな人」のタイプもまた、一言で言い現すならば、「食えない奴」ではないでしょう

 

アカギ※ の名言「奴は死ぬまで保留する」。これは多くのビジネスマンが共感する言葉でもあり

 

辛い決断を迫られた時、「保留」という選択肢がいかに便利であるかに気づくものです。人は楽なほうに流れるので、保留が可能なのであれば極力保留したくなり

 

ビジネスの世界でも、競争相手が嫌がることは戦略として正しいことが多いです。例えば、頭脳明晰なチームを揃えるか、超気合い入ったチームを揃えるか、どちらが競合相手として嫌かを想像して、超気合い入ったチームだとしたらそれが正解です。頭がいい経営者ほど、論理や合理に惑わされ、こんな単純なことを間違えやすい

 

麻雀も牌効率や場況判断ばかりでなく、誰の心が折れるのか、誰がへこむのかを想像することが実践では大事だと思います。人が嫌がることばかり想像していると性格が悪くなりそうですが、それが勝負というものです。単なるお人好しではどの世界でも勝ち残ることはできませ

 

麻雀は勝てば面白く、負ければ面白くありません。身も蓋もない言い方ですが、これは真理です。場末の雀荘と言われるような場所には、歴戦の強者しか残っていません。勝ってる人はまた来店したくなりますが、弱い人はカモられてもう行きたくなくなるから

 

仕事も麻雀も、結果が出なければ面白くありません。だからと言って諦めたらそこで終わり

 

勝てば面白く、負ければ面白くない」この真理と潔く向き合って努力するしかありません。挫折や敗北を受け入れ、それを乗り越えた先に成長があるの

 

宗教教育にあるような「見えないものを信じる力」は人が生きる上でとても大切なことです。それは何も神さまに限った話ではなく、目に見えない愛、友情、勇気などもそうです。超高学歴の頭がいい人が会社に入って苦戦する多くのケースは、そういった力を評価できず、問題に対して正しい答えを出すことしか知らないからです。ビジネスの世界では、デジタル思考だけでは必ず行き詰まり

 

麻雀の世界も案外同じで、理論的、確率的に正しい打牌を繰り返すだけの打ち手では、そこそこのレベルから上に行くことはできないのではないでしょう

 

また、キレるにしても、熱くなって暴牌のように勝負に行く人と、怖くなって極端に降りを選択する人と両方いますが、どちらにしても我を失っています。我を失った人は、相手から見れば格好の餌食です。結局はキレたらそこでゲームオーバーなのです。  仕事においても、上司に取引先に同僚に、途中でキレそうなことならいくらでもあると思います。しかし、最後にゲームを制している人はいつも、忍耐強く、我慢強く、最後までゲームを投げ出さ

 

た人だけです。麻雀を通じて精神力を鍛え、より強靭な「忍耐力」を身につけましょう。それは人生における大きな武器になると思い

 

麻雀で昔からある格言「ドラは出世の妨げ」とは、ドラを持っていると目指すべき役作りの邪魔

 

なるという意味ですが、実社会においても自分の持っているドラにどこまで固執するか、どこで見切るのかはとても大事なことなの

 

また、序盤の鳴き仕掛けに対し押してくる相手には、流局してもいいから大物手に仕上げてヒヤリとさせたいところです。私なんかは、苦しい手の内を見せるくらいなら聴牌でも伏せた方がいいとすら考えます。  一旦相手にこの人は怖いなと思わせたら、その後のゲーム運びはずいぶん楽になります。相手が勝手に畏れて敬意を払ってくれるからです。自分に対して幻想を抱き、焦って自滅してくれたりすれば、それだけで麻雀は有利なの

 

麻雀の初心者が不思議な大勝ちをする「ビギナーズラック」。おそらく読者の皆さんも見たり聞いたり、経験したことがあると思います。  実はこれ、麻雀に限らず株などでも起こりやすい現象です。株で儲けるのは単純で「安いところで買って、高いところで売ればよい」のです。株のビギナーは「この会社の株、いま安いのでは?」という単純な発想から儲かったりします。  たとえば、新作のゲームを自分がプレイしてみたら面白い。「このゲームを出した会社の業績は伸びそうだな」。これぐらいシンプルな考え方でいいんです。僕自身、会社のベンチャー投資で400億円以上の利益を上げていますが、その手法はそのくらいシンプルなものでした。ところが、株も麻雀も、色々な「経験」をし、「知識」を身につけていくうちにどんどん複雑化して訳が分からなくなります。いわば「迷いの森」に入ってしまうの

 

もちろん、シンプルなだけではだめで知識・経験は絶対に必要です。ただ、「難しく考えすぎているな」と思ったときは、シンプルな発想に立ち返ってみるといいでしょう。それが最強の打ち方

 

突然ですが皆さん、麻雀中に他家の強打が気になったり、貧乏ゆすりが気になったり、ちょっとした癖が気になって調子を落とした経験はありませんか? メンタルの勝負でもある麻雀は、何かを気にしたり執着し始めたりすると途端に勝てなくなります。そんな時に限って、「あの変な鳴きで好牌が流れた」とか「他家の自分勝手なアガリのせいで」とか、負けた原因を他の人のせいにしがちです。  しかし、その気持ちこそがツキを落とす要因になります。麻雀は「何が起きても自分のせい」という心構えがとても大事です。麻雀とは、そもそもが不公平で理不尽なゲームであり、牌パイが悪かろうが相手が悪かろうがそれでも勝たなければならないのに、何かのせいにしている時点で甘いの

 

ビジネスも同じく不公平かつ理不尽で、それでも勝たなければならない世界なのですが、私が受けるビジネスマンの悩みの中でも、「一緒に働く同僚が苦手」「向かいの席の人が生理的に合わない」といったものが少なくありません。これは麻雀で誰かの癖が気になるのと同様、一度執着し始めると

 

が気になって仕方なくなって、そこから抜け出るのは容易ではありません。そうなると業務にかなりの悪影響を与えてしまいます。周囲にいる誰かの嫌なところが気になりながら仕事をしていれば、気持ち良く仕事ができません。そうなると評価が下がり、ツキを落としてしまいます。そういう状況ならば、席替えを申し出るとか、ダメなところを思い切って相手に言うとか、なんとかして悪い流れにある状況を…

 

麻雀は、プロや雀荘のメンバーのように皆が行儀よく、迷惑をかけずに打ってくれる訳ではありません。相手の嫌なところが気になって執着し始めたら、危険信号です。嫌なところを直接言うか、さもなくば席を立つ。両方とも出来…

 

本当は、嫌な気分をシャットアウトして切り替える術を身に着けることが出来ればそれが一番いいのですが、僕でもそれは本当に難しいです。だけど少…

 

を覚えておけば、心構えができることで、多少は楽…

 

さて、私は仕事においても「牌を磨けばツキが戻る」から学んだことを活かしています。よく人から「逆境をどう克服したのですか?」という質問を受けるのですが、いつも「状況が悪いときこそ基本に立ち戻って丁寧にやる」と答えています。麻雀と同様、状況が悪い時にあがいても、傷口を広げてしまうだけなの

 

押し過ぎてもダメだし、引きすぎてもダメ。麻雀が強くなるための技術の中には、「牌効率」「打

選択」「牌読み」など色々ありますが、その人の麻雀が強いか弱いかを最も大きく左右するのは「押し引き」だと思います。  プロのタイトル戦を観ていても、その勝敗を分けているのは、長い対局の中でもほんの幾つかの場面の押し引きの判断ではないでしょうか。  押すべきところでしっかり押して、引くべきところではしっかり引く。その大事な「押し引き」の判断基準は、経験を積んだ人ほど引き気味になりやすいと覚えておいたほうが良いでしょう。  仕事もまた、リスクを取らなければリターンを得ることは出来ませんが、経験を積むと引き気味になりやすい

 

例えばビジネスの場合、儲かりそうなものは世界中から同じことをやる人が現れ、あっという間に熾烈な競争になります。ビジネスもまた、同じものであればどの会社がやってもそうは変わらないものです。それでも勝ち残るのは、最後の%のところまで気を抜かず努力した人たちです。逆に%までは大した差がつかないの


他者への想像力を身につけることは、仕事の成長そのものと言えます。富裕層、貧困層、著名人、会社員、大学生、主婦などなど、様々な立場の人が想像でき、望むものが解るようになれば、的確なサービス内容、正しい価格設定、人を動かし、組織を動かし、仕事はなんでも自由自在、つまり仕事が出来る人に成り


私は、麻雀を通じて他者への想像力を磨くことができると思っています。相手の置かれている立場を想像するには自分にも沢山の経験が必要ですが、それに取り組むことは人間的な成長にも繫がります。麻雀プロは年齢的に 20 代よりも 30 代、 40 代と強くなっていきますが、その理由の一つは人生経験を通じて他者への想像力に磨きがかかるからではないでしょうか。実際、トップレベルの麻雀プロは人間的にも魅力的な方が多い


麻雀もそれに似たところがあると思います。みんな「アカギ」のように最初から天才でありたいと願うものですが、それは漫画の世界です。イケイケの人が放銃しまくって守備を覚えたり、メンゼン派の人がスピード負けして鳴きを多用してみたり、痛い目にあって自信を失う度に、誰も皆、自分の特徴がどんどん削がれて丸くなっていきます。その過程を経て、同じような強さの人が量産されるのです。  そこから抜け出す強さを身につけたければ、本来の自分らしさを取り戻し、それを磨き上げるしかないのだと思います。雀鬼会で強い人も、恐らくあの厳しい制約の中でユニークさを発揮し、頭角


現してくる人なのでしょう。  最後に、自分はどうなのか? と問うならば、「やたら本気で麻雀に取り組む上場企業の社長」というのがだいぶユニークなので、それでよしとし


株やFXでも破産しやすいのは大勝した経験がある人です。それは何故でしょうか。賭けるレートが膨らみやすいとか、一発逆転を狙うようになるとか理由は色々ありますが、一番の問題は大勝した記憶が頭に残ることだと思います。相場を長くやっていれば、偶然の幸運が重なって大勝する日も


ば、偶然の不運が重なって大負けする日もあります。それは確率の低い偶然の一日に過ぎないのに、人は大勝した日ほど、何度もそれを思い出し、勝因を分析し、長く記憶に留めてしまいます。そして(あの日のようにやればいい)(あれが自分の勝ちパターン)と思ってしまうの


麻雀でも、もの凄く勝った日の次に打つ麻雀は負けやすいと思いませんか? それは、たまたま幸運続きだった日の打ち方を引きずってしまうからです。勝ってもすぐ忘れられる人はいいですが、(これが自分の勝ちパターン)と思ってしまうと、普通の日でもバランスを崩し


逆もまた真なりで、麻雀は信じられないほど不運が続いて大負けすることもあります。そんな日もまた偶然に過ぎないのに、必要以上に反省したり、落ち込んだりすれば、自信を失いバランスを崩し、長期スランプに突入しやすいです。勝ちすぎたり負けすぎたりした時は、軽く振り返ってさっさと


くらいが丁度良いのではないでしょう


仕事でも、「なんでもできます」という社員は結局なんにもできないのと同じです。また、会社も「なんでも屋です」というのは大体ダメです。商売もやろうと思えばなんでもできるので、色々出来たほうが有利に見えるかも知れませんが、そうではありません。「これしかできない」制約の中で創った深みが強みであり、それにこそお金を払う価値があるの


幻冬舎見城徹社長と私の共著で、『絶望しきって死ぬために、今を熱狂して生きろ』というタイトルの本があります。人生で何より辛いのは、夢を叶えられなかったことではありません。「悔い」を残したまま一生を終えることです。目標に対して圧倒的努力と情熱を注ぎ、全て出しきれれば、悔いは残りません。絶望しきった私は晴れやかな気持ちで、また麻雀を続けていくつもり


一方、会社の社長や芸能人で意外と麻雀が強くて、それを「持っている」という言い方をする人もいますが、私はそこに居る存在感とか、押し出しの強さが関係していると思います。安物っぽい服を着ていたり、安物っぽい動きや顔、そういうものは弱そうに見えてしまい、それは不利なことだと思うのです。ビジネスの世界でも、安っぽい服装をしていたら相手から安く見られるし、同じスーツでもシャキッとしている人は仕事がデキそうだと思われ


もちろん外見からは想像がつかなかったけど、意外と優秀だったということはあるのですが、麻雀でも仕事でも、少しでも自分に有利にゲームを運びたいのなら、服装や自分が醸し出す雰囲気に気を遣うことはとても大事だと思い


阿佐田哲也さんが著書の中で、麻雀を打つ人は社長であり営業であり技術者でもある、ひとりで全部やらなければならない。といった趣旨のことを仰っていました。私も、麻雀は「ひとりで行う会社組織のよう」であると考えています。技術者のように局面の正確な判断を積み上げていくことが


だし、社長のように大局を見て統制をとることも必要です。「社長」と「技術者」両方をひとりでやるのが麻雀だとすると、野球チームの「監督兼選手」がなかなか難しいように、マネジメントとプレイヤーを両立するのは簡単ではありません。でも、ひとりでそれを乗り越えなければ本当に強くはなれないというところに麻雀の醍醐味があるとも言えるのではないでしょう


しかし、誰にでも起こりうる逆境。そこからどう立て直すのか、それこそが腕の見せ所であり、番組の見どころだと思っています。ご期待


サッカーでは、アルゼンチン代表のメッシのような選手が「違いの生み出せる選手」と称されることがあります。一瞬の閃きでチームの戦略やフォーメーションといった「型」から抜け出し、決定的な仕事ができる選手であるという意味です。チームにそういった選手がいなければ、決定打が出せずに膠着状態に陥って、相手のミスを待つ展開になりやすい


麻雀にも定石やセオリーといった「型」があります。相手のレベルが低ければ、型に従い、とにかく致命的なミスを避けているだけでもそこそこ勝てます。しかし、相手のレベルが高くなると、ミスをしないだけでは差がつかないので、どこかで違いを生み出す決定的なプレーを決めないとなかなか勝てませ


麻雀界のファンタジスタの異名を持つ鈴木達也プロは、いつも 飄々 としていて、我が道を行く印象です。サッカー界のファンタジスタ、メッシは味方が攻め込まれてる時はのんびり歩いてい


いつも真面目な人は型にはまりやすいので、ちょっと肩の力を抜いてみることがポイントなのかも知れません


2000年頃、インターネットバブル真っ只中にサイバーエージェントは上場しました。ところが上場直後にバブルは崩壊し、株価は急落、当時の業績は赤字で、週刊誌やネットで激しくバッシングされ、社長である私は株主からの怒りだけでなく、取引先からも反感を買い、従業員からは不信感を持たれていました。当時の私は、何が問題なのかといろんな人のアドバイスを聞いて、迷い、右へ左へブレていました。そのせいで状況は更に悪化、会社を手放すギリギリのところまで追い詰められていたのですが、最終的に私を救ったのは「信念を貫けよ」の一言でし


今では想像し難いですが、業績低迷中の経営者を外から見ると、やることなすこと間違っているように見えます。そして周りを取り巻く人は様々な立場で様々な意見を言ってきます。それをいちいちまともに真に受けてたら軸がぶれるのは当たり前


麻雀も、連敗して自信を喪失している時に誰かにアドバイスをもらっても、それは参考程度にしかなり


ん。自分の「麻雀観」は自分だけのものであり、他人には分からないものです。偶然の確率で連敗に遭遇した時、いかに自分の信念を貫けるか、それが麻雀にも人生にも通じる苦境の脱し方なの


日経平均株価の長期トレンドの中央値が仮に1万5千円だとすると、日経平均が1万円の時は株が安いです。それならば買い。逆に2万円の時は株が高いから手を出すべきではないということになります。ドル円相場は長い目で見ると、大体100円から120円を行ったり来たりしています。それなら1ドル100円を割るような時はドルが安いので買ったほうがいいし、120円を超えるようならドルを売るべき


とても簡単な話ですが、投資のプロでもこんなに単純なことを見誤ります。100円を割るほど円高に進行している時は、「1ドル 50 円時代がやってくる」などともっと不安を煽られるので、逆を買うのは勇気が要るものです。また株価が2万円を超えるようなタイミングは、長い目で見れば下がる可能性が高く、上がる可能性が小さい、つまりハイリスクローリターンなのは明白です。ところが株価が高騰している時ほど、多くの人がもっと大きく上がると思い込むもの


麻雀はとてもメンタルバランスを崩しやすいゲームです。大勝ちした時に「コツをつかんだ!」と思ったらそれはバランスを崩し始めた合図だと思って良いかも知れません。門前リーチを多用して連勝すれば、鳴き仕掛けができなくなります。鳴き仕掛けが成功して凌げば、苦しい時は鳴き仕掛けが頭をよぎるようになります。大事な場面で守備的にいって勝てば、次の大事なところでは勝負できなくなります。  バランスを崩すのは人間なので仕方ありません。仕事も麻雀も、バランスを崩しては回復し、バランスを崩しては回復しを繰り返して前進するものだと思います。その繰り返しこそが仕事ができるようになる、麻雀が強くなるということではないでしょう


それにしても麻雀は自己管理に自己否定、それに辛抱、我慢、忍耐と辛いことばかりです。余暇を楽しむというよりも、修行の場だと思った方が良いかも知れません


勝った人は強い。しかし、強い人が勝つとは限らない、それだけが事実です。そのことを常に自分に言い聞かせるところにしか、麻雀もビジネスも突破口はないの


起業家という人種には実に様々なスタイルの人がいて、成功している人の共通項は何かと聞かれても、見つけるのは容易ではありません。それでも多くの優秀な起業家と接してきた私が、共通していると感じる部分はあります。その一つが、「人から聞いた話を翌日には自分で思いついたように話す」です。それも借りてきたような話し方ではなく、いつの間にか自分の中で咀嚼し、自分の言葉に変換されているの


非凡な成果は天使のようなしたたかさと、悪魔のような繊細さでことを運んだ時に生まれます。それは、麻雀にも同じことが言え


大トップに立っている親番で、更に連荘を積み重ねる人は悪魔のようです。しかし、もう点差が開いたからと雑に打ってしまうようでは平凡な成績しか残せません。そんな時こそ小さな加点も決して見逃さず、相手のチャンスは徹底的に潰し、点棒があっても無駄な放銃は避ける、そんな繊細さが大切なの


麻雀をしていると、カンしてリーチにドラを増やしてくれたら天使とか、一発やハイテイを消す人は悪魔とか、細かいところまで天使と悪魔のシーンは代わる代わる訪れます。その時にどう振る舞うか、それによって雀力に差が出ます。単純すぎる人は「天使のようにしたたかに、悪魔のように繊細に」この言葉を胸に刻んで麻雀を打つと良いでしょ


仕事も麻雀も先行有利である理由は「選択肢が増える」からです。仕事で先に結果を出せば、実績と余裕から、仕事内容も、時間の使い方も選べるようになります。一方、遅れをとった人はだんだん選択肢が狭められ、一発逆転を狙いたくなるの


体調だけではありません。コンディションを整える上で精神的に安定していることも重要です。仕事でも家庭でも不安や悩みを抱えていると、やはり集中力が落ちます。卓上にそれらを持ち込まないよう、抱えている問題は全て片付け、100%麻雀に集中できる精神状態で対局に臨むことも意識しています。  体調や精神面を自己管理できてこそプロだと言えますが、会社での仕事も同じです。体調が悪い人はミスが増えるし、後ろ向きな発想をしやすいです。また精神が安定していなければ良い仕事はできません。メンヘラみたいな人と結婚して家庭が不安定になり、仕事に集中できなくて才能を潰してしまった人も過去に見てきましたが、結局それもプロとして自分で管理するしかないのです。  仕事も麻雀と同様、体調や精神面が悪くてもたまたまうまくいくことがあります。でも長く第一線で活躍している人は皆、自己管理が優れているの


時間も潰れますが、人間暇を持て余すとろくなことがありません。仕事のことで必要以上に悩んでしまうばかりでなく、お金があって暇だと、不動産でも買おうかな? とか、浮気でもしてみようかな? などとつい余計なことを思いついてしまうものです。 「仕事を忘れられる」は長く仕事を続けていくなら必要なことです。駆け出しの頃と勝負所は100%仕事に集中した方が良いと思いますが、結局仕事は長期戦です。安定して戦い抜くために、時には仕事を忘れる


を身につけておくと良いでしょ


私が 20 代の頃、ネットバブル崩壊後になんとか危機を脱し、3年で黒字化する計画を立てました。逆に言えば3年は赤字が続くということです。その時間を如何にやり過ごすか、私は当時楽天三木谷社長に相談しました。「趣味を持ちなよ。ゴルフか乗馬かワインかな」そうアドバイスをもらってゴルフを始めました。ゴルフにハマっていた期間は今振り返れば救われました。赤字の会社を経営しながらあまり根詰めて目の前の現実と不安な未来に向き合っていたら、気がおかしくなっていたかも知れません。たまにインタビューなどで「逆境をどうやって乗り越えたのですか?」と聞かれると、「ただ時間をやり過ごしました」と答えてい


サイバーエージェントでは社訓として「インターネットという成長産業から軸足をぶらさない」と掲げています。インターネットは自分たちの土俵ですが、隣の芝生は青く見えるような他業界は、中の人しか知らない落とし穴が実はたくさんあるの


「これほどの努力を人は運と言う」これは幻冬舎見城社長の言葉ですが、運という言葉を使って片付けたがる人は、本当の努力とは何かを知らないのだと思います。確かに、仕事にも運やツキが存在します。でも、麻雀をやっている人ならわかると思いますが、運やツキがそう長く続くことはありません。結局は運とは関係ない、努力で磨いた自力の部分で大差がつくの


麻雀は「たまたま運が良かっただけ」と言われやすい競技です。しかし、芸能人であろうと人生の成功者であろうとずっとツキ続ける人などいるはずもなく、長くやっていれば運の要素は皆平等です。最後は明確に


で差がつきます。トップレベルの麻雀プロの中には、そんな細かい手順に意味があるのかと思えるような研究を重ね、たまの休みも麻雀と向き合い、牌も見たくないような日でも逃げ出さず、1ミリでも自力を上げるために信じられないような努力を積み重ねている人もい


政治やスポーツの世界も同じです。自分の意に沿わない政党があっても、政権を取られれば彼らの主張が正義であり、世の価値観になっていきます。スポーツチームで戦術を変えた監督がどれだけ批判を浴びようと、シーズンの最後に優勝すれば監督の行ったことは全部正しかったということになり


このように「勝てば官軍、負ければ賊軍」は、この世界における厳然たる事実です。正義なんて結果次第でコロコロ変わります。負けたら意味がないと腹を括らなければなりません。勝つためなら何をしてもいいという訳ではありませんが、自分が信じる道ならば、外野から何を言われようが、最後に勝てば良いの


勝ちにしか価値がないと覚悟を決めた人と、心のどこかに言い訳を持っている人では%までは差が出ません。しかしながら覚悟を決めた人の最後%の努力や集中力は全く違います。仕事も麻雀も、その僅かな違いが圧倒的な大差となり、勝者と敗者を分けるの


とある麻雀大会の開会のスピーチで、クレディセゾンの林野宏社長が「麻雀より面白い遊びはこの世の中にありません! これは私が言うんだから間違いない」と仰っていました。さすがに世界中のありとあらゆる遊びを知り尽くした、御年 75 歳の林野社長の言葉には説得力があり


以前、アーリーリタイアについて経営者の先輩と話している時、こんなことを聞いたことがあります。若くしてひと財産築いて、仕事を辞めて遊んで暮らす、それは日々プレッシャーとストレスに苛まれながら仕事をしている社長なら、誰もが一度は夢見る話です。しかし、私の周りで実際にそれをやった人は、ほぼ例外なく数年で仕事に戻ってきてしまいます。おそらく時間を持て余すことに飽きてしまうのでしょう。そこで、私が「アーリーリタイアしても退屈ですよね?」と質問すると、「違う。それはハワイで暮らしても、奥さんと二人で世界旅行しても、毎日飲み歩いても、そんなのはすぐに飽きるんだ」「実力の近い友達が3人以上居て、毎日ゴルフと麻雀で真剣勝負してたら永遠に飽きないよ」そう教えてくれたの


アーリーリタイアするかどうかは別として、麻雀が一生退屈しなくて済む遊びであることは間違いない


う。そのためにはやはり対戦してくれる友人が必要です。つまり、実力の近い麻雀メンツは一生の友人になる可能性があり、大切にするべきなの


麻雀は奥深く、様々なドラマが生まれる本当に完成度が高いゲームです。麻雀を考案した人は天才だと思います。ノーベル賞をあげてもいいくらいではないでしょう


経営の仕事において、「実践者」である経営者の役割は実はとても単純で普通のことです。儲かりそうなもの、成長しそうなものを選んで、勝てそうな作戦を考え、ひたすら実践するのです。それが成功を収めると、その後に「研究者」みたいな学者や評論家が現れて、わざわざ難しそうな経済用語を用いて解説してくれるので、何かアカデミックなことをやったように見えます。そして、経営者を目指す人が、わざわざ難しく解説されたものを有難がって学ぼうとしている姿は滑稽にすら見えることがあります。それが仕事における「うまぶっている」状態かも知れませ


これに近い現象は麻雀でも見られます。私は、放送対局でトッププロ相手に厳しい対局が続いても、恥ずかしくない成績を収めてきたと自負していますが、一方で経営者で集まって酒飲みながらセット麻雀を打っていると、コロっと負けたりします。要するに気が緩んでいるのです。ここぞという大会では常に好成績を収めるプロが、巷の雀荘で一般人相手にあっさり負けてしまうのも同じだと思います。麻雀も仕事も、適度な緊張感を持っていなければ、思わぬミスをして体勢を崩すということ


幸せな日々を送っていた人が、車を運転している最中、たったの数秒間スマホに気をとられただけで大事故を起こし、そのまま帰らぬ人となったり、重傷を負ってその後の人生で身体が不自由になったり、一生償わなければならない莫大な賠償金を抱えることがあります。順風満帆だった会社が、思わぬ情報漏洩や不正会計、社内の不祥事などで、世間からバッシングを受け、謝罪会見を開き、莫大な損害賠償金を抱え、破産にまで追い込まれることもあります。  そう考えると人生も仕事も、生き残りを賭けた「致命的なミスをしないゲーム」と言えるかも知れません。ただ、普段は運転中にスマホを見ても、何事も起きないことが大半だったり、不正が起きても何日も誰も気付かなかったりするもので、人はつい油断してしまうの


ミスの原因は、格下の相手や点差を広げた時などの「油断」、点棒を失った時の「焦り」など、気の緩みに起因することが多いです。もちろん寝不足、二日酔いなど体調管理によるミスもあるし、ミスした後に反省しないのも次のミスを繰り返す原因になります。  麻雀が「ミスしないゲー」だとすると、結局は如何に真剣に、集中して打っているかの勝負とも言えるかも知れません。麻雀が一生懸命やらないと勝てないゲームである所以はそこにあると思います。そう考えると、一打一打絶対に後悔したくないと、打牌が遅くなる人がいるのも理解はできます


先日、当社は仮想通貨の取引所から撤退しました。コインチェックの580億円の盗難事件に、


の取引所では2000兆円の誤発注事故まで発生しました。どんなにリターンがあっても片方の天秤の重さが無限大ということで、「やらないほうが得」と判断したの


実は我々も8年前から「サイバーエージェントレディストーナメント」という女子の大会のスポンサーをしています。何億円もの費用が掛かりますが、スポンサーとしての満足度はとても高いです。大会名に社名が出るとか、テレビに映るといった宣伝要素もありますが、それだけではありません。毎年、プロアマ戦に広告


の顧客を招待しているのですが、そこに参加した方の満足度が非常に高いのです。それによって増える取引額の大きさを勘案すれば、億単位の投資は十分に見合っていると言え


選手の中には、自分が良いスコアを出せばいい、他のことに関わりたくないという人もいるでしょう。しかし、現実的に自分のプレーだけで通用する世界はほとんどありません。支えてくれる人たちがあってのもの


そもそも漫画雑誌である近代麻雀の読者層にはお構いなく、稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんが出演し話題になった「 72 時間ホンネテレビ」を放送するに至った経緯を初めて自分の言葉で説明したり、


仮想通貨取引所から撤退したニュースの真相を、唯一近代麻雀だけで書いたりもしました。  我ながら、(この誌面で一体誰に向かって訴えているのだろう……?)などと書きながら疑問が浮かぶこともありましたが、今回本になることで、より多くのビジネスマンにも届けられたらと思い


最後に、本著のタイトルは『仕事が麻雀で麻雀が仕事』であり、著者である私は麻雀が人並み以上に得意であり、仕事も少なからず出来るから現在の立場にいるのだと思います。  しかしながら、「麻雀が強くなれば仕事ができる人になれますか?」と聞かれれば、残念ながらそれはNOです。麻雀が強くなれば仕事ができる人になれる訳ではありません。逆も然りで、麻雀が弱いからといって仕事ができない訳ではありません。それは多くの麻雀をするビジネスマンを見てきて、結論的にそう思っています。  でも、麻雀にはたくさんの気づきがあり、そこから学んだことが仕事に、そして人生に活かせることは


ありません。そして、今の日本の教育に足りてないのは、麻雀のような不平等なゲームをいかに勝ち抜くかを学ぶことだとも思っています。  前書きからの繰り返しになりますが、麻雀は勝負強さを学ぶ上で最高の教材になり得ます。本著をきっかけに、麻雀という競技に興味を持ってくれる人が更に増えてくることを心より願ってい