275.1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法 山口 揚平

タイトルに関する話はほとんどなかった。

私は今、1日の仕事時間を3時間と決めているが、 10 年前と比べ、その成果は3倍になっている。こう考えると現代の日本で最も賢いのは大学教授や政治家、官僚、大企業の役員やベンチャー起業家ではないように思われる。たしかに彼らは知的かもしれないが、真に賢い(ストリートスマート) のは「お笑い芸人」だと私は考える。

 

つまり「すべてのものは一見、分かれているように見えるが、実は有機的につながっている。 そしてそのつながりの中に潜む本質を問い続けることこそ、最も有効な解を見つける手段である」 ということである。

 

効率的に何かを成し遂げたいのであれば、常に考えて最も本質的なことだけに手をつけるべき である。祖母から「ずつなし(面倒くさがり屋の意)」と言われ続けてきた私にとって、「最も大切なことを一つだけやればいい」と確信できたことは大きな救いになった。

 

複数の選択肢がある人は一つの案に執着しないから幸せでいられる。幸福が人間の目的なら、 真の知性とは、囚われない心を持つ力 である。

 

世間は大きな誤解をしている。ホリエモンが入学した東大はすごく頭が良い人が行く、と思っている。しかし、実際に東大に入るのは「頭の良い人」ではない。頭が良いかどうかとは関係なく、 受験を高尚なる行為ではなく、単なるゲームだと矮小化して捉えている人が合格している。進学校のシステムとはそういうものだ。

 

・会う人を選ぶ ・人の多いところに行かない(満員電車に乗らないなど)

 

モナ・リザ」や「最後の 晩餐」などを描いたレオナルド・ダ・ヴィンチは画家のイメージが強いが、彼が残した業績は天文学建築学、解剖学、物理学など多岐にわたる。人は彼を「万能人(uomo universale)」と呼ぶが、それは大きな 噓 である。  彼の才能は 思考の広さの一点にある。アートも、人の骨格も、ヘリコプターの概念図もすべて同列で見ていた。ただ、社会の中で受け入れられたのがアートだった、

 

今やその実力が世界で認められている映画監督の 北野武 氏も全く同じだ。いまだに彼の創作を見て「お笑い芸人が何やっているの」という印象を持つ人がいるが、彼にとっては漫才も絵画も映画も小説も、すべてつながっている。

 

時間を生み出すのは健康(エネルギー) である。  健康はときにビジネスの現場で犠牲にされがちだが、長期的に成果を挙げているビジネスパーソンや経営者は、このエネルギーこそがすべての源泉だと知っている。

 

21 世紀、人が一番お金をかけるのは、プラスのピアエフェクト(好影響) を与えてくれる人材を側に置くことだ。 おそらくあと 10 年以内で人々が一番お金を払う対象は「 臨在(仏教用語で優れた人のそばにいることを指す)」になる。高級車でも別荘でもファーストクラスでもない。学校・会社・趣味・家族・シェアメイトを問わず、共に過ごす人の選択と継続に人はコストの大半をかけるようになるだろう。 関係こそが健康と幸福のすべてだと気づく からだ( 図 36)。

 

孤独は4・7兆円の損失、健康に最も不衛生と実証済である。今はタダの人間関係は将来、最大の投資先となるということだ。これがわかっているならば、今のうちに最高の人とつながりを作っておくことだ。

 

一つ前の項目で、経済の中心はモノでもコトでもなく、ピア(誰かと一緒にいること) になると述べた。そうなると、誰かと共にいること自体が仕事となる。  最近の卑近な例を挙げるのであれば、友活などもその部類に入る。何かを提供する作業を伴わず、一緒にいること自体が相手にとって価値となるからである。  したがってまずは、 一緒にいて気持ちの良い人になる必要がある。

 

一緒にいて気持ちの良い人とは、一般的にはコミュニケーション能力の高さを意味するが、 コミュニケーション力とは、言ってみれば「人との距離感のマネジメント」 にほかならない。嫌いな上司、尊敬する先輩、未熟な後輩、友人、親戚、あらゆる人それぞれに応じた適切な距離を 10 段階くらいで設定でき、それぞれに応じた接し方、言葉の使い方、語彙を増やしていくことである。

 

相手を単にブロックするのか、仲良くなるのかといった白か黒かの選択ではない。 相手との関係にグラデーション(濃淡) をつけること である。

 

だからこそ業界という枠組みを超えて橋渡しすることで新しい価値を生み出せるハイブリッド人材の価値は乗数的に上がるのだ。たとえば税理士の年収は500万円、ベトナム語の通訳の年収も500万円、だがベトナム語を話す税理士の年収は5000万円である。

 

ではどうやったら人生の意味を「生存」から「創造」へと転換できるかと言ったら、一つの方法は ニートとして1~2年、名実ともに生産を放棄する期間を設けること だと思っている。

 

最初は慣れないだろう。ニート初心者がせいぜいできるのは単純な暇つぶしである。つまり、2ちゃんねるや仮想通貨取引、漫画喫茶などである。  だがそれらの世界に身を置いていると、そのうち禁断症状が出てくる。どうしても社会復帰したくなる。食えないからではない。生きる意味を見出せないからだ。

 

小さな記録が小さな達成感を生み、成長を促す。少しずつ大きくて社会的な目標が生まれ、「じゃあ、人に貢献してみよう」と思えるようになる。貢献をお金に変換するということができるようになる。それが新しい時代の仕事の方法である。  それを続けていれば、仕事と仕事を組み合わせてさらに大きな価値を生み出すシステムを創り始めるだろう。それがビジネス創造である。そして「仕事は遊び。ビジネスは価値と信用を創造するゲームにすぎない」と悟るときがきたら、ようやくパラダイムシフトが完了した証 である。

 

正直なところ、私は2020年頃までは遊んで寝て暮らせばいいと思っている。

 

なぜなら先述した通り、2022年からはルールがガラッと変わるからだ。

 

ヨーロッパやアメリカでは新卒チケットというものがないので、大学を出てから世界を旅したり、NPOなどで社会経験や実績を積んで 25 ~ 28 歳くらいで就職したりするパターンが一般的だ。  一方の日本では、一括採用文化の影響で自分の天才性に気づいていないのに就職してしまい、イメージとのギャップやモチベーションの維持に苦しむ人が絶えない。

 

仕事の性質は人の機微を感じること、人と人の関係を育むための機会やツールの創造へと変わる。 人は濃厚な意識の交流こそ健康と幸福の源泉であると再発見するようになる だろう。