253.ファイナンスこそが最強の意思決定術である。 正田 圭

活躍できる人とできない人の差は「

 

では、「意思決定の質」はどのように高めていけばよいのでしょうか?  その答えは、意外かもしれませんが、ファイナンスを習得することです。 意思決定の質が高く、ずば抜けた結果を出す人は皆、高度なファイナンス力を持ってい

 

ファイナンスを活用することは、ビジネスの世界で、この「フロー状態」に入るための効果的な手法 なのです。   断言しますが、皆さんがファイナンスを習得し、質の高い意思決定を行うことができるようになれば、今までとは全く違った、ハイレベルなパフォーマンスを発揮することが可能になり

 

冒頭の話に戻りますが、活躍している人にその理由を聞くと、「偶然だ」とか「運が良かっただけ」という回答が返ってきます。しかし多くのビジネスパーソンと話していると、それは 偶然ではなく必然 なのではないかと考えさせられる数々のエピソードが浮かび上がってきます。「飛びぬけた結果を出す人」には「飛びぬけた結果を出す理由」がある のです。

 

そこには、 ファイナンス的思考を用いて、細かいところから大きなところまで質の高い意思決定を連続的に行っている、という共通要素がある の

 

私は、 ビジネスの世界で成功を収めたい誰もが、ファイナンス思考を学ぶべき だと考えています。財務や経理の畑ではなく、企業の経営幹部でもない、圧倒的多数の社会人や若者こそが、ファイナンスで意思決定する術を知ることが重要だと考えているのです。  本書を書いたのも、このような理由

 

この予言が産業界を驚かせたのは、これまで人間にしかできないと思われた仕事さえもが「消える仕事」として指摘されていたからです。  目につくところで挙げていくと、会計士、銀行の融資担当者、不動産ブローカー、保険の審査担当者、苦情の処理・調査担当者

 

では、このような世界になっていくなかで、ビジネスパーソンに求められることは何になるのでしょうか?  すでにお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、それは「インパクトのある意思決定をすること」です。もっと言えば、「インパクトのある意思決定をし、それに対してきちんと責任を取ること」 なのです。   あと数十年もたてば、ビジネスの世界では、この1点しかビジネスパーソンには求められなくなる と私は予想してい

 

かくいう私も、仕事時間に関して言えば、そこまで多いほうではありません。午前中は、週3~4日はジムに行き、体を動かしていることも多いですし、夜も 18 時には帰宅し、家族で夕食をとります。睡眠時間も確保しなければならないほうなので、 23 時ごろには就寝しています。日曜日には子供を水族館や動物園に連れて行きますし、平日の夕方でも、ふらっと子供を連れてディズニーランドに出かけることもあり

 

実際に、ビジネスで大きな成果を出す人は、 どれだけ多く働いたかよりも、自分の限りある労働時間をどこに振り分けるかに多くの時間と精神力を使っている 傾向にあり

 

自分の手掛けているプロジェクトや事業部のどこを突けば伸びるのか、

伸びないのかの見極めが、ビジネスのパフォーマンスに大きく影響して

 

また、自分の仕事だけではなく、新入社員教育のどこを重点的に行うか(パソコンのスキルか、ビジネスマナーか、接客スキルか等)、自分が仕事の能力を高めるためにどの本を読むのかなど、どこにリソースを投資するかで成否は変わってき

 

私は、ビジネスパーソンの時間の振り分け方も、この「アセットアロケーション」と同じだと考えてい

戦う場所や勝負すべきポイントがズレていれば、課題解決をどれだけ頑張っても何も好転しない から

 

ビジネスパーソンが人並み外れた成果を出そうとするとき、手を動かし始めるよりもまず最初にするべきは、「どう戦うか」以前に「どこで戦うか」をきちんと見極めること

 

時間や労力といったリソースは、無限にあるものではなく、限られたものです。だからこそ、 最小限のリソースを使って最大限の成果をあげるような仕事の仕方が求められている のです。まさにファイナンスにおける投資の

のように、限られた時間と労力をどこにつぎ込めばいいのか、判断する力が必要になっているわけ

 

ビジネスの極意は、「労働時間」でも「作業スピード」でもありません。  限られたリソースをどこに投資するかです。  つまり、 ビジネスは「投資活動」なのです。そして、その投資効果を最大にするためのファイナンスなの

 

「今の子供たちの 65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に

 

いわゆる「当たりもしない予測」に労力を使うくらいならば、変化する世の中に対して、その都度適切な対応をすることができるための「意思決定力」を磨いたほうが良い、と私は考えているの

 

私は「暗号通貨時代」にこそ「ファイナンス力」が重要 だと考えてい

 

1つめは、ファイナンスを学ぶことで「選択」と「決断」の質が上がることです。 自分はどこに集中すればよいか、何をするべきでないかの意思決定の質が上がるために、自分の努力が成果に直結する ようになります。

 

ファイナンスの世界には「効率的市場仮説」 という考え方が存在します。   市場では、情報が瞬時に伝達されて価格に反映されるので、そこで実現する現物価格は常に正しい可能性が高い ということ

 

「理論価格」と「現物価格」が大きく乖離していることなんてザラにあるのです。  つまり、 世の中の「価格」が完全に効率的な状態にならないため、常に価格に対して、行動の選択余地がある の

 

具体的にどういうことなのかというと、「これは自分の考える理論価値よりも安いから買っておこう」とか、「これは自分の思う理論価値よりも高いから売ろう」、「これは今の時点では高すぎるが、もう少ししたら値段が下がるに違いないからいったん待とう」などという行動を選択し得る、ということなのです。

 

そして、ここからが大事なのですが、 モノの値段は人によって違うために、いろいろな意思決定の手法や技術が生まれてくる の

 

例えば、スティーブ・ジョブズは、三宅一生がデザインした黒のタートルネックとリーバイスジーンズ、ニューバランスのスニーカーがトレードマークで、同じものを何着も持っていて、それを着回していたといいます。  これは、「今日は何を身につけるか」という選択に頭を使いたくなかった からだと公言していまし

 

このように、取引参加コストを支払い、損するリスクを取引参加コストだけに限定することを、ファイナンス用語では「オプションを買う」と言い

 

 これに対して、損するリスクの高い「超都合の悪い」取引を引き受けて、代わりに対価を受け取ることを「オプションを売る」と言います。  また、この「取引参加コスト」は、正しくは「オプション・プレミアム」と呼び

 

結局のところ、オプションの買い手と売り手には明らかな有利・不利は出ませんが、「損失の額は限定されるが、利益は大きく受け取れる」という特殊な状況を作り出すことができるの

 

例えば、高級ホテルは数ヵ月前から予約をして部屋をおさえることが可能です。当日宿泊するのも宿泊しないのも自由ですが、寸前にキャンセルすると、キャンセル料金が発生します。  これも言ってみればオプション取引

 

不動産の購入も同じです。不動産の購入時には、慣習として手付金というものを支払います。だいたい5~ 10%ほどの手付金を支払いますが、手付金を諦めさえすれば、事前に押さえておいた不動産を購入しないという選択をすることができ

 

生命保険も同じくオプション取引です。生命保険に加入して、月々の

を支払うことによって、何か病気やケガなどをした際には一定の金額を受け取る権利を購入しているの

 

わらしべ長者」の男も、意思決定をするとき、次に起こることを想定していたわけではありません。  おもちゃを交換してミカンを手に入れておけば、次に喉が渇いた人が目の前を通り過ぎるはずだなんてもちろん考えていたわけではありませんし、絹を持っていれば馬と交換できるなんてあらかじめわかっていたわけでもありませ

 

そのような 先行きのわからない中で、都度、質の高い意思決定をしていくことが、結果として点と点がつながっていき、大きなことを成し遂げることにつながっていく の

 

ファイナンス力が高まり、意思決定の技術が向上すると、必然的に、どのような意思決定をすればどうなりそうかという予想の精度は上がっていく でしょう。  今回は

 

医師がレントゲン写真を一瞬見ただけで病気がわかるとか、プロ野球の強打者が相手の投球フォームを見ただけでどこを目がけてバットを振ればよいのかがわかるのも、実はこれと同じ理屈なの

 

そして、これはファイナンスが最強の意思決定技術である理由のひとつでもあるのですが、この 意思決定の技術が高まってくると、日々の一つひとつの意思決定のすべての質が向上することになるため、連鎖的に様々な分野で優位性を確保することにつながり、こうした流れが乗数効果的に作用し始めていくことになります。つまり、意思決定を重ねていくごとに優位性が大きくなっていく の

 

一つひとつは小さな優位性であったとしても、それが雪だるま式に発展し、やがて大きな力となる の

 

人生は、意思決定の連続です。朝起きて水を飲むかどうか、職場についたら最初に何をするかなど、 全てにおいて意思決定が絡んでき

 

モノの価値を考え、意思決定するということは、日々何をするにしても出てくるトピックであり、何度も何度も繰り返されることです。

 

数々の意思決定の技術を認知し、理解し、記憶していくことで、専門性のある独自の知識をため込むことができ、それが少しの優位性となります。  こうした意思決定の精度は、表面的には目に見えないような優位性であるため、このような能力を意識的に高めている人は少ないような気がします。しかし、 飛び抜けた成果を出そうとするならば、意思決定の技術の研鑽は欠かせませ

 

意思決定の回数は一日何十回、もしかすると何百回と出てくるものですから、一つひとつの「小さな優位性」の乗数効果が得られやすい の

 

ファイナンスでモノの値段を考えることは、皆さんの意思決定の質を高め、皆さんの結果を決定的に変える力を持っているのです。

 

前述したオプションという考え方は、そうした試みの中で生まれたものです。 不確実性の高い将来に「時間」という概念を取り入れた の

 

ファイナンスで意思決定することは、値段で考えることであるため、比較できる ②意思決定は日々連続的に行われるものであるため、ファイナンス力を磨いて意思決定力を高めると、乗数効果的に成果が出る

 

ファイナンスは、時間価値を考慮している唯一の技術で

 

意思決定を行うための知識分野は、実は数多く存在します。「マーケティング」「統計学」「会計」「経営学」……。もちろん、どれも有意義な分野ですし、皆さんにもぜひ学んでいただきたいと思います。私はなにも、ファイナンスしか勉強しなくてよいと言っているわけではありませ

 

しかし、これらの学問を見渡しても、「時間」という概念を扱うのはファイナンスだけ です。「時間」を扱うという点こそ、ファイナンス特有の概念

 

現在は、未来予想がしにくく、ビジョンが作りにくい時代です。  テクノロジーの進化が加速度的に進み、長期の将来予測はもはや不可能といっていいかもしれませ

 

時間は誰にでも平等です。逆に言えば、 世の中で平等なのは時間しかありません。自分の仕事や生活の時間を何に使うのか、どのような配分で使う

 

徹底的に考え、費用対効果の高い部分に皆さんの時間を振り分けていけば、短い時間で高い付加価値を生み出せる仕事だけに注力できるようになります。  そのようなパフォーマンスの良さが結局は点と点でつながっていき、皆さんが壮大な未来を作っていくことにつながるのだと信じてい

 

では、 計算式よりも重要なものは何かというと、DCF法で価値を算定しようと思うなら、その後のストーリーが大事になる ということです。  企業価値算定の場合、買収後、その企業をどのように経営するかで企業の価値は変わってくることになります。   これまでのことは一切関係なく、これからどうなるのかだけが、インカムアプローチで価値を算定する際の重要論点となる のです。

 

しかし、ナマのビジネスの世界ではそうはいきません。  事業環境が変化していけば、不確実性は複利的に増加していくからです。  結局のところ、高度に進歩したファイナンスの技術を用いても、変わりゆく状況に

が基盤になっています。

 

ストックオプションの正体は、「現在高給を支払えない企業が、給料を抑えてもらう代わりに、将来大きな給料を払うという口約束」なのです。

 

現在の100円は、将来の100円よりも価値が高いのでした。その理由は、将来は不確実なため、何が起こるかわからないため、価値を割り引いて考えるのだ、ということでした。

 

このように、ファイナンスの世界には、時間という概念が盛り込まれています。  この 時間という概念を「現在価値」や「ボラティリティ」などを用いて金額に落とし込み、意思決定をしていくのがファイナンスの技術を習得する醍醐味 とも言えます。

 

ファイナンスが得意なビジネスパーソンは、みんなが右を向いているときに左を向くことのできる判断力を持ってい

 

そう考えると、「ファイナンスを身につけたい」という理想を掲げている人にとって、「投資銀行に就職する」というのは必ずしも近道ではなく、かえって遠回りだったりすることもある の

 

AIなどのコンピュータに唯一不可能なことは、責任を取ることだからです。責任の所在は、最終的にはコンピュータではなく、人間に帰属します。  人間がAIにとって代わられないことは、「責任を負う」ことなのです。  これからの時代は、 責任を負う立場にどれだけ身を置けるかが、スタープレイヤーになれるか否かを決める ことになるでしょ

 

ちなみに、私はプロの会計士と知り合う機会が比較的多いのですが、「ファイナンスにくわしい会計士」にはこれまで会ったことがありません。  これは、会計がベースに扱っている財務三表(バランスシート、損益計算書キャッシュフロー計算書)が「過去」のお金をとらえているのに対して、ファイナンスが「未来」のお金を対象にしているからでしょう。  同じお金を扱う学問でも、そうした時間軸の違いがあるの

 

ファイナンスは、みんなが右を向いているときに、ただ一人、左を向くことができる能力ですから、周囲と自分を同一視して客観的な目を持てない人は、正しい意思決定をするのがむずかしくなり

 

自身を飛躍的に成長させる方法が思いつかない人は、頭を柔軟にするために、 10 倍にならないかという視点から考えてみる のもよいかもしれません。 ◆売上が 10 倍にならないか ◆年収が 10 倍にならないか ◆資産が 10 倍にならないか ◆ 10 日かかる仕事が1日で終わらないか ◆広告費を 10 分の1に削減できないか

 

このように考えると、今のやり方の延長線上では決して解決できないため、思考を柔軟にせざるを得ませ

 

試験までは受けていないものの、「公認会計士試験」「税理士試験」「司法試験」「宅建」「保険数理士」など様々な分野の勉強もしました。書籍は数千冊読みました。わからない部分があったとき、著者に直接連絡して

乞うたことも少なくありませ