221.アベノミクスによろしく 明石順平

①金融緩和→食べ物の量を増やすこと。 ②財政政策→食欲を増やして食べさせること。 ③規制緩和→体質改善して消化・吸収を良くする

 

こうやって、信用創造などを経て実際に市中に供給されたお金を「マネーストック」というんだ。会社や個人が持っている預金等を全部合わせたものだよ。信用創造によってお金が増えるから、マネーストックは当然マネタリーベースより断然

 

マネタリーベースがお金の 素 で、それを使って作り出されたのが

ストックということか。マネーストックが増えれば、みんなが持っているお金が増えるということだから、物価が上がるということ

 

なお、GDPというのは、非常に簡単に言うと、国内でみんなが儲けたお金を全部合計したもの

よ。これがその国の経済規模を示すんだ。そして、名目GDPというのは、物価の上昇を考慮しない、金額そのままの数値を

 

そうだね。このように、物価が上がれば景気が良くなるという考えを持つ経済学者を「リフレ派」っていうんだ。リフレっていうのは「リフレーション( 再膨張)」の略だよ。このリフレ派の代表的な学者として、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンという人がいる。金融緩和はこの人の考え方に基づいていると言ってもいい

 

①マネタリーベースとは日銀が供給する通貨のこと。より具体的に言うと、「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」の合計値。異次元の金融緩和はこのうち「日銀当座預金」のお金を増やしていく政策。日銀当座預金とは日銀が民間銀行のお金を預かる口座。日銀は民間銀行から国債を大量に買い取り、その代金を日銀当座預金に入れて

 

マネーストックとは世の中に出回っているお金の総量で、個人や企業、

保有している現金・預金を全部合計したもの。日銀当座預金を増やしても、それが貸し出しに回らなければ、このマネーストックは増えない。マネーストックが増えないと、物価も上がら

 

そのとおり。そして、クルーグマンの言うことに従えば、日本はスタグフレーション状態に陥っていたと言える。物価の伸びに賃金が全然追いついていないんだから。なお、スタグフレーションというのは、経済が停滞しているのに物価だけ上がってしまうという最悪の状態のことを

 

第3章まとめ ①2014年度の実質民間最終消費支出はリーマンショック時( 2008年度)を超える下落率を記録した。 ②戦後初の「2年度連続で実質民間最終消費支出が下がる」という現象が起きた。 ③2015年度の実質民間最終消費支出は、アベノミクス開始前( 2012

)を下回った( 消費がアベノミクス前より冷えた)。 ④2015年度の実質GDPは2013年度を下回った( 3年分の成長率が1年分の成長率を下回った)。 ⑤暦年実質GDPにおいて、同じ3年間で比較した場合、アベノミクス民主党政権時代の約3分の1しか実質GDPを伸ばすことができなかっ

 

第4章まとめ ①GDPが改定され、数字が大きくかさ上げされた。その要因は、「2008SNA対応によるもの」と「その他」。 ②「その他」のかさ上げ額は、アベノミクス以降だけが桁違いに突出している。アベノミクス以前の「その他」かさ上げ額は平均するとむしろ

 

であり、特に1990年代が大きくマイナスになっている。 ③改定によって、アベノミクス失敗を象徴する5つの現象のうち4つが消失。そして、2016年度の名目GDPは史上最高額を記録。 ④「2008SNA対応」を隠れ蓑 にして、それと全然関係ない「その他」の部分でかさ上げ額を調整し、歴史の書き換えに等しい改定がされた疑いが

 

マネタリーベースを前例のない異常なペースで増加させるものだ。つまり、円がとてもたくさん民間銀行に供給される。そして、たくさん供給されるほど円の価値は下がると予想される。だから、円安が進む。円安になると、外国の投資家からすれば、日本株がお買い得になる。例えば、1ドル 80 円だったら、8000円の株を1株買うのに100ドル必要だ。ところが、1ドル100円だったら、8000円の株を買うのに 80 ドルで済むことに

ドルも安くなったことになるね。そうか、円安というのは、外国

からすれば、株が安売りされているのと同じなんだ

そう。そもそも労働組合のない会社が多数を占めているから、物価を無理やり上げたところで、労働者からの賃上げの圧力がかかってくるわけじゃない。そういう観点からしても、リフレ派の「物価を上げれば賃金も勝手に上がる」という思い込みは大間違いだったと言うべきだろう。 太  

て、そもそも賃金が上がりにくい環境なんだね。 モ  うん。ちなみに、欧米だと労働組合は企業別ではなく、産業別に存在している。そして、物価が上がればそれに合わせて賃金も上がる「物価スライド制」が定められているところもある。日本はそういった仕組みがない。

うん。ちなみに、欧米だと労働組合は企業別ではなく、産業別に存在している。そして、物価が上がればそれに合わせて賃金も上がる「物価スライド制」が定められているところもある。日本はそういった仕組みがない。

 

第5章まとめ ①雇用改善は、生産年齢人口減少、医療・福祉分野の大幅な需要拡大、雇用構造の変化( 非正規雇用の増大)によるもので、民主党政権時代から続いていた傾向。アベノミクスは無関係。 ②株価の上昇は、日銀( 異次元の金融緩和、ETF爆買い)とGPIF( 年金資金

)によるもので、実体経済を反映していない。公的資金投入をやめると暴落は必至。 ③円安の恩恵を一番受けた製造業ですら、実質賃金は大きく下落。 ④賃上げ2%を達成できたのは、全労働者のわずか5%程度。労働組合組織率が低いことも影響して、そもそも日本は賃金が上がりにくい構造になって

これ、自民党の支持母体が経団連だから出てきた法案だよね。 モ  そう。自民党は経営者側からの視点しかないのだろうね。これが

なら違うよ。なぜなら民進党の支持母体は連合、つまり労働組合だからね。つまり、自民党民進党には、「使用者側政党」対「労働者側政党」という対立軸が

 

第6章まとめ ①残業代ゼロ法案とは「高度プロフェッショナル制度の導入」と「企画業務型裁量労働制の拡大」の2つからなるもの。 ②「高度プロフェッショナル制度」は、当初こそ年収1075万円以上の人を対象としている。しかし改正が繰り返され、最終的に経団連の目標である「年収400万円以上」が対象とされる可能性が高い。 ③「企画業務型裁量労働制」は、何か企画して業務を管理する人や、法人相手の営業マンが対象となる。対象者は、実労働時間に関係なく、

 

決められた時間働いたと「みなされる」。その結果、残業しても残業したことにならない。最大の問題点は、年収要件がないこと。例えば年収200万円の人も対象になってしまう。 ④残業代ゼロ法案は、労働者の健康を害するだけではなく、経済にも悪影響を与えるもの。経済発展のためにはむしろ

 

価格が下がると利回りが上がり、価格が上がると利回りが下がるのね。国債の価格と利回りは真逆に動くということか。どういう時に国債の価格が下がる

国の借金返済能力が危うくなった時だ。国債を買っても本当に償還されるかどうかわからなくなるので、人気がなくなり、価格が下がる。そして、その分利回りは上昇する。 太  ハイリスク・ハイリターンになるということか。

 

そう。国債の償還期限は最短6カ月から最長 40 年まであるけど、償還前に現金が必要になることはあるからね。そして、流通市場における新発 10 年国債の利回りが「長期金利」と呼ばれて、代表的な金利の指標になっている。この長期金利が、日銀が民間銀行にお金を貸す際の金利なんかにも影響する。長期金利が上下すれば、だいたいそれに合わせて貸出金利も上下する。

 

中央銀行国債の直接引き受けをさせてはいけない」というのは人類が学んだ貴重な教訓なんだ。だから、だいたいどこの国でも中央銀行は政府から独立していて、国債の直接引き受けをしないようにして

 

うん。ここで太平洋戦争後に日本がどうやって借金を返したか簡単に説明しよう。政府は一定額以上の預金を引き出せなくする預金封鎖を行った。 太  預金をあらかじめ引き出していた人は難を逃れたわけね。 モ  いや、違う。預金封鎖と一緒に新円切替を行った。預金した人だけが新円と切り替えることができ、旧円は無効になった。こうすると、預金せざるを得ない。新円をもらう方法は預金しかないからね。そうやって預金させたところで、持っている資産に合わせて最低 25%、最高 90%の財産税をかけて税金を取った。それを膨れ上がった借金の返済に充てたんだ。これは当時

 

していたインフレを抑えるためという大義名分で実行された。ただ、これでも返しきれたわけではない。結局その後も進行したインフレの方が大きく影響して、借金をどうにか返すことができ

 

日銀が金融緩和をやめる、つまり国債の買い入れをやめると、国債が暴落する可能性がある。 ②国債が暴落すると、円と株も暴落する可能性がある。 ③国債が暴落すると長期金利が上昇し、国の借金返済が余計に困難になる。

上記①~③の事態を避けるため、このまま金融緩和を続けたとしても、どこかで円の信用が失われ、円が暴落する可能性が