152.税金を払わない巨大企業 富岡幸雄

節税の勉強のために読書。大変勉強になった。やはり株や為替で稼ぐと税金的にも有利だし、そうするべきだね。

この5期は、たしかに世界的な経済不況の時期ではありました。しかし、メガバンク各行は、業績が好調だったにもかかわらず、10年以上にわたって国への法人税を減免されてきました。1990年代後半からの不良債権処理があまりに巨額で、多額の繰越欠損金を抱えていたためです


総合商社として〝ラーメンから航空機〟まで扱っていたのは過去のこと。いまの商社は、国内外企業への出資やマネジメントなど、投資会社に近い業務を行っています。  日本の総合商社大手総合商社の場合、世界中で資源開発など様々なプロジェクトに出資をして、配当という形で収益を得ています。もちろん、現地の低い税率で税金を納めてはいますが、日本の本社に還流させる収益には殆んど税金がかかっていません。おそらく三菱商事三井物産も、この制度を活用して法人税額を低く抑えていると思われます


「外国子会社配当益金不算入制度」は、これまで海外子会社に溜め込まれがちだった収益を、国内に還流させることを目的に設けられました。つまり、税金はかけないからカネだけ日本に還流させてくれと。企業の海外移転に歯止めがかからない状況下で、さすがの財務省も背に腹は代えられなかったのでしょう。  とはいえ、海外子会社の収益を日本に還流させても、「5%」しか課税対でさえ、いわゆる必要経費等として損金(外国子会社の管理等の経費)に算入されるので、実質的にほぼ無課税となっているのです


くり返しますが、法人税の元になるのは、売上などの収入=「益金」です。そして、大企業の経済活動のひとつに、グループ内の子会社・関連会社や他社の株式を取得する場合があります。わかりやすく言えば出資です。  出資した企業は、株式を保有している会社が利益をあげて配当すれば、受取配当金という収入があります。たとえば持株会社は、グループ傘下の企業に「出資」=「株式を取得」して、経営方針に大きな影響を与える〝司令塔〟です。その見返りに、配当という形でグループ内の利益が集約されます


前述のとおり商社の場合、現在では商品売買よりも、出資企業やアドバイザーとしての側面が大きくなっています。その意味では、出資は企業の経済活動の大きな柱ともなっています。  では、大企業の中でこの受取配当金はどのようなウエイトを占めているのでしょうか。受取配当金の多い大企業のうち、2008年3月期~2013年3月期までの6期通算で、受取配当金が5000億円以上の会社をあげると21社ありました。それが、「受取配当金の多い会社」(表3)です。その中には、前掲した「実効税負担率が低い大企業」に顔を出した大企業も多く入っていました


利益の10倍以上もある受取配当金  受取配当金が税引前純利益よりどれほど多いか、受取配当金構成比(「受取配当金」「税引前純利益」)で比較しましょう。この受取配当金構成比が大きければ大きいほど、企業は受取配当金に収益を依存していることになります。  たとえば、日立製作所(17位)の受取配当金(6530億7900万円)

は、税引前利益(572億3500万円)の1141・0%(11・4倍)もあります。同じく、第一生命保険(3位)の受取配当金は税引前利益の656・0%(6・56倍)、三井物産(7位)は201・9%(2・019倍)、丸紅(21位)は178・0%(1・78倍)、みずほコーポレート銀行(6位)は177・1%(1・771倍)もあります。  これら21社のうち、ほとんどの企業が、税引前純利益より受取配当金のほうが多いことがわかります。つまり、受取配当金が大企業の大きな収入源となっているのです。  それにもかかわらず、納めている法人税の実効税負担率は、紹介したように著しく低い。なぜでしょうか。  種明かしをすると、「受取配当金益金不算入制度」といって、企業が他社の株式を取得した場合、その受取配当金は課税益金に算入しないでもいいという「法人間配当無視」が認められているからです。子会社や関係会社の株式等にかかわる配当については、課税ベースに100%不算入が認められています。子会社や関係会社に出資して…

また、子会社や関係会社以外の企業の株式についても、50%が益金不算入なのですから、株式投資をしても、利益の半額は目をつぶっていても非課税となるわけです。  企業から見れば、系列会社への株式投資は、税制上極めて有効な資産運用法と言えます。

多くの受取配当金を受け取ることはありません。これも、投資に充てられる資金力が豊富な大企業に有利な税制と言えるでしょう。  子会社、関係会社からであれば申告ゼロに  さらに言えば、経営上の収益が赤字であっても、また受取配当金で補塡して企業決算が黒字になった場合でも、受け取る配当金が子会社や関係会社からのものであれば、申告税額はゼロにできる可能性があります。  たとえば東芝は、税引前純利益はマイナス1005億5600万円でしたが、受取配当金は、その赤字額の670・0%(6・7倍)にのぼる6737億2500万円もありました。また、野村ホールディングス
のに、課税ベースとなる所得は0円…

税引前純利益の赤字額としては、このリストではパナソニック(旧松下電器産業)のマイナス1兆588億1000万円が最大でした。同社はこの時期、白物家電の売上の落ち込みや、三洋電機を完全子会社化するために、これほど巨額の赤字を計上したものと思われます。しかし、5532億9900万円もの配当金で赤字額の半分以上を補塡できたのです…

稲盛氏が創業し、名誉会長をつめとる京セラも、実は、実効税負担率が低い企業として登場しています。2013年3月期では、22位の23・46%でした。  このように見ていくと、「法人税が高い」と声高に主張している巨大企業こそ、実際には、驚くほど軽い税金しか納めていない実態が明らかになっています


大企業の法人税実効負担率が低いのは、企業が公表している利益と、税務上の課税所得に大きなギャップが存在するからです。  このような差額が生じるのは、税務上で受取配当金のような「益金除外」や、繰越し欠損金を利益から差し引く「損金算入」などが行われているからです。これらの処理は、企業が抱える専門の会計担当者によって、税法の網の目をくぐり抜けるよう巧みに行われています


私が大企業の問題を取り上げるのは、日本の法人税制が大企業を優遇する一方で、中小企業には優遇措置が適用される条件が整っていないために、法定税率に近い税率が当てはめられているからです。日本の法人税の現状は、「巨大企業が極小の税負担」なのに対して、「中堅・中小企業が極大の税負担」となっていて、企業規模別の視点から見れば「逆累進構造」となっています。  税制上の公平とは、所得が大きい企業が多く負担するという「応能負担」が原則です。その意味では、日本の税制の現状は、とても公平とは言えません。  


受取配当金は、「受取配当金益金不算入制度」によって、企業が、国内にある他社の株式を保有している場合に、その受取配当金を課税益金に算入しないでもいいという制度です。その受取配当金益金不算入の割合は、子会社や関係会社の株式等にかかわる配当については、100%の「法人間配当無税」が認められています。また、子会社や関連会社以外の企業の株式についても、50%が益金不算入となっています


配当金の増大に象徴されるように、近年、日本の社会には異常な変化が進行してきて、日本の企業経営者の意識が大幅にアメリカナイズされてきているのを感じます。バブル崩壊と「失われた10年」以降は、日本企業も、短期により多くの利益を求めるアメリカ型経営への傾斜と、株主重視の傾向が急速に強まってきています。その現象として「配当性向の増大」によって株主への配当金の大幅な増額が行われる一方で、「労働分配率の減少」が進行し、非正規雇用といわれる派遣労働者や契約労働者、パート従業員などの給与水準が低下しています。偏った富の集中が進行している証拠です


保有割合についても、日本における全上場企業の個人株主の持株比率はわずか20%程度にすぎないのに対して、80%近くが法人株主となっています。法人株主偏重の状況は、ここ20年以上も変わっていません。 「受取配当金益金不算入制度」(法人間配当無税)は、法人企業と株主個人の二重課税排除のために設けられた側面もありました。しかし今では、大企業の利益の多くは、個人株主に帰着していないのですから、もはやこの制度を適用する根拠は失われたに等しいのです。それにもかかわらず、依然としてこの制度が実施されているのは、大企業を優遇するばかりで、国民に負担を押しつける結果になっています。  私は、巨大企業の受取配当金は課税対象にすべきだと主張しています


この手法を連続的に行うのが土地転がしです。所有する不動産を担保に借り入れた資金で不動産を購入するというやり方を連続して行えば、課税を逃れながら、多くの不動産を獲得することが可能です。ただし、この方法は、不動産価格が暴落すれば、赤字も雪だるま式に膨らむ危険をともなっています。

この複雑な手法は、アイルランドに2つの会社を設け、さらにオランダの会社を介在させることから、「ダブル・アイリッシュ・ウィズ・ダッチ・サンドイッチ」と呼ばれます

国境をまたぐ節税戦略を利用する企業にIT企業が目立つのは、ソフトをダウンロードする際の知的財産権の使用料を、ライセンス(特許)の譲渡などによって、低税率国の子会社に簡単に移し替えられるからです。現在のデジタル経済に、税制が追いついていない代表的な例でしょう


程度の差こそあれ、多くの企業が税率の低い国や地域に利益を集め、世界的スケールで税負担が軽くなるタックス・プランニングを巧みに活用しています。  


証券税制では、これまで低迷する株式市場を活性化するためとして、上場株式の譲渡所得(キャピタル・ゲイン)に対しては申告分離課税とし、しかも本則は20%(所得税15%、個人住民税5%)であるものを、その半分の10%(所得税7%、個人住民税3%)の軽減税率とする優遇措置を2013年12月31日まで適用してきました。  所得税は、個人の担税力(税の支払い能力)を指標として課税する税制なのですから総合課税が建前であり、分離課税は例外措置です。  このような株式の譲渡所得に対する異常な不公平税制は、国際的にみても極端で、不労所得に属するキャピタル・ゲインに対しては、世界一といっていいくらい安い税金に抑えていました。この制度は、「株価対策のため」と説明されてきましたが、その効果は全くありませんでした。しかも、この特別措置は時限立法でありながら、証券業界の圧力や、政治家と政党が何かと理屈をつけて、驚くべきことに、これまで3回も適用期間を延長してきたのです


日本社会は、現在、税を逃れる手段を持つ1%足らずの富裕層と、その尻ぬぐいをするように重税に苦しむ99%を超える貧困層とに二極分化しつつあります。富める者はますます富み、貧する者はますます貧する。この傾向に拍車をかけているのが、タックス・ヘイブンを駆使する脱法スキームと言っても過言ではありません。  


あらためて指摘しますが、日本の所得税の最大の問題点は、資産性所得に対する課税に欠陥があることです。利子所得や配当所得、譲渡所得などの産性所得の多くが、適確に課税対象とはならないうえに、分離課税などで軽減されています。資産性所得の多い富裕層は割安な税負担になっていて、税負担に耐えられる人がより多くの税金を担うという総合累進課税に風穴が空いているのです


国税庁の調査によれば、全国約250万社の中小企業(資本金1億円以下)のうち、黒字で法人税を払っているのは、3割にも満たない約70万社にとどまります。残りの約180万社は赤字経営なのです


この配偶者控除を撤廃して、年収103万円以下の人にも課税しようとしているのです。  もし、この配偶者控除が本当に女性就労のハードルになっているとしたら、逆に配偶者控除額を引き上げる方が女性就労の推進力になるでしょう。それを、「女性の就労を後押しする」という本末転倒のもっともらしい理屈をつけるところが、為政者の詭弁です。