139.心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣 長谷部誠

ドイツには「整理整頓は、人生の半分である」ということわざがある


日頃から整理整頓を心がけていれば、それが生活や仕事に規律や秩序をもたらす。だから整理整頓は人生の半分と言えるくらい大切なんだ、という味。  このことわざに、僕も共感できる


よくお酒が入ると相手の本音が引き出せるとも言うけれど、そういう考え方も好きじゃない。お酒の力を借りないと本音を言い合えないという関係がそもそも嫌だし、そんな状態で出てきた本音に価値を見出せない。  現役を引退したら、お酒に対する考え方が変わるかもしれないけれど、今はお酒は100%楽しむものとして、仕事とは完全に切り離しておきたい。こういう細かな線引きが心を整えるためにも必要だと思う。 8   子どもの無垢さに触れる。  僕の姉には、3歳になる娘と0歳の息子(現在は5歳と3歳)がいる。


イギリスの文豪トーマス・カーライルは、こんな言葉を残している。 「ハチは暗闇でなければ蜜をつくらぬ。脳は沈黙でなければ、思想を生ぜぬ」  まあ、僕の考えはこんなに哲学的ではないけれど、沈黙、すなわちひとりでいる時間はとても大切な時間だ


答えがないようなことを延々と考えすぎて、迷いが生まれているときにどう切り替えるか。そういうときに僕は身近なところにいる「頑張っている人」を目にするようにしている。  日本にいた頃で言うと、真夏の炎天下、工事現場で働くおじさん。  腕まくりをして汗を流しているおじさんを見ると、僕は何だかすごく熱くなる。きっと早朝から家族のためを思って頑張っているんだろうな。自分もああいうカッコ良さを身につけたいと思って、小さなことに悩んでいる場合じゃないとエネルギーがわいてくる。あとはお母さんが小さい子どもを自
に乗せて、一生懸命こいでいる姿も好きだ。僕はこのシーンが女性の魅力的な瞬間のひとつだとも思うし、パワーをもらえるのだ。  僕が気がつかないだけで、日々の生活は頑張っている人々の姿であふれているのだと思う。自分のことでいっぱいいっぱいにならず、そういう姿に気がつける自分でありたい


監督もある程度、流れというのが必要なのかもしれないと、このときに学んだ


別の章でも書いたが、カズさん(三浦知良)は会食していても、自分が決めた時間には切り上げるし、それは事務所の先輩、俊さん(中村俊輔)などもそうだと聞く


また、そういう準備不足の人間がひとりでもいると組織の士気にも悪影響を及ぼす。ドイツには、「箱のなかに腐ったリンゴがひとつでもあると、全部が腐ってしまう」ということわざがある。腐るとまでは言わないが、ひとりでも遅刻する人間がいると、組織としての集中力に雑音が生じると思


あくまで僕個人の意見としては、ゲームやインターネットに時間を費やしすぎるのはもったいないことだと思う。サッカーゲームをすれば、ピッチ
俯瞰して見ることができて、サッカーの役に立つという意見もあるかもしれないが、そうであったら、実際のサッカーの試合をテレビで観た方がよほど勉強になる。それに映画を観たり、読書をしたり、語学の勉強をするなどした方が、はるかに自分のためになる。  遊びたい気持ちも分かる。誰かに心の隙間を埋めてもらいたいと思う気持ちも分かる。でも、ほどほどにしないといけない。自分で自分にけじめをつけなければならない


しかし、そういう生活を1年近く送ったときに、僕はふとある“〝相関関係”〟に気がついた。まわりの選手を見ていると、夜遊びをして、たくさんお酒を飲んでいる選手ほど筋肉系のケガをする確率が高かったのだ。  もちろんこれは僕の主観で、データ的な裏づけもないし、もしか


しかし僕は知っている。難しい道ほど自分に多くのものをもたらし、新しい世界が目の前に広がることを。  最初の岐路は高校受験だった。僕
両親の誕生日には必ず電話をしたり、プレゼントを贈るので、友達からは「オマエはマメだよな」と言われることがある。けれど本当に感謝する気持ちがあれば、お世話になっている人のために何かすることを面倒に思ったりはしないはずだ。少しでも時間や労力を取られるなあと感じたら、それは心から感謝していない証拠かもしれない。  感謝する能力は意識次第でいくらでも伸ばせるし、それに感謝は自分のためでもある。もし自分が感謝の気持ちを忘れなければ、まわりがどんどん自分にポジティブなエネルギーをくれるはずだ。周囲から助けてもらえる選手と助けてもらえない選手では、成長スピードに差も出る。少し観念的だけれど、関わる人すべてを幸せにするつもりで働けば、その気持ちは結果として還ってくる。僕はそう信じている


時折、もっと豪放に生きてみたいと憧れることもありますが、自分自身の内なる弱さを認め、それと向き合って生きていくというのが自分に向いてい
と考えています。よく弱さを認めるのも強さであると聞くことがありますが、本当にそのとおりです。強がってばかりいてもすぐに一杯いっぱいになってしまいますし、自分の弱さを知ってこそ、人は他人に優しくなれるのではないでしょう